タイ・NBT(タイ国営放送局)での「ABUデジスタ・ティーンズ」の本番収録まであとわずか、というタイミングで、番組のとりまとめをしているNHKからスタジオ収録の構成に関する相談が入った。
今回、「Future(未来)」という共通コンセプトでアジア7カ国の代表が創った作品をスタジオで披露し、その撮影の裏話などを聞きながらスタジオ展開させ、各部門の優秀賞を発表するというのが収録のおおまかな内容である。
スタジオ演出の変更でNHKが望んだこと
そもそも10月に東京で開かれたプロデューサー会議で、カンボジア代表チームの登場シーンでは、コマ撮り作品の中に登場する粘土で作ったキャラクターや背景をスタジオに持ちこみ、創作の工夫などをその場で語ってもらうことになっていたそうなのだ。
ところが、カンボジア代表チームに聞いてみたら、紙粘土で作ったキャラクターは乾いてボロボロになってしまい、創作が終わった今となっては背景とともに「捨ててしまった」と言うのである。
さて・・・どうしたものか?
スタジオにはアジア7カ国から代表チームがやってくる。前回紹介したように、彼らの作品を創作する過程をまとめたショートドキュメンタリーを見せ、彼らのデジタルアート作品を披露する。
そして、それぞれのチームに合わせたちょっとしたスタジオ演出が必要なのだが、ここに国ごとのチームの個性がちゃんと反映されるような工夫が必要だとNHKは考えて悩んでいるわけである。
しばらくNHK側とその演出についての意見交換をした。その結果、NHK側の演出意図は大体以下のような方向になった。
(1)カンボジアらしさが出るVTRを作ってそれをスタジオで見せたい。たとえばアンコールワットなどの風景の中で撮影できないか?
(2)それに加えてチームメンバーの先生や両親などからの応援メッセージを撮影して、それをスタジオで彼らに見せたい。つまり、彼らにはビデオを収録したことは内緒にして撮影を進められないか?
なるほど。NHK側が欲している意図はわかる。カンボジアらしい風景をバックに、彼らにゆかりのある先生やご両親に集まってもらい、そこから彼らへの応援メッセージを送り、それをサプライズでスタジオで展開させたい、と。