おでんなどに欠かせない食材「こんにゃく」の歴史と科学を、前後篇で追っている。前篇では、「こんにゃく史上最大の革新」とも言える、江戸時代のイノベーションを紹介した。生芋から作っていたこんにゃくを、粉から作るようにすることで、原料運搬などの効率が格段に高まり、また、冬場も含めて通年の流通が可能となった。こうして、こんにゃくは広く人びとに浸透していったのである。

 日本人にとって定番の食材の1つとなったこんにゃく。いまや「こんにゃく」と聞いて、そのイメージを思い浮かべられない人はいないだろう。しかし、固定化されたイメージが、逆にこんにゃくのもつ潜在的な可能性から目をそむける結果になっていないだろうか。

 後篇では、こんにゃくのイメージを打破して、新たなこんにゃく製品を開発しようとしている人物に登場してもらう。未来食品研究所(群馬県)の滝口強氏は、こんにゃくの主成分の潜在力に着目し、新たな形態のこんにゃく加工品の開発を目指している。こんにゃくのイノベーションは再び起きるだろうか。

伝統食材ゆえの固定観念を打破したい

 こんにゃくは、かねてから「腹の砂下し」などの効果が言われ、健康に良い食材とされてきた。現代も、食物繊維が豊富で、かつカロリーがほぼゼロといったことから、ダイエットや健康な食生活のお供として定評がある。

 ところが、こんにゃくの消費量は年々低下傾向にあるのだ。昭和40年代の水準からすると、1世帯あたりの消費量は半分を切った。2007年から2012年の5年間でも5%減となっている。原料となるこんにゃく芋の生産量も減っている。昭和40年代、全国での年間生産量は10万トンを超えていたが、近年では5万トン台まで落ち込む年もある。