10月18日付の読売新聞夕刊に「東大病院など補助金凍結」との見出しが躍った。

 厚生労働省が「臨床研究中核病院整備事業等」と題して行っている東大病院を含む15病院を指定し先端的臨床研究を行う拠点作りを目指す予算事業において、今年度の東大病院に対する補助金交付が凍結されているとの内容である。

背景にあるのは製薬企業との不適切な関係

 記事では補助金が凍結された背景として、SIGN研究事件(白血病治療薬事件)、ディオバン事件(バルサルタン事件)、CASE-J事件(ブロプレス事件)など、一連の製薬企業による医師主導臨床研究への不正関与事件が頻発していることが挙げられている。

 さらに10月24日の集中CONFIDENTIALの報道によると、読売の記事を受けて作成された厚労省の内部資料においても、東大病院への補助金凍結は事実であり、その理由は臨床研究に関する不適切事案があったからである、とのことだ(東大以外で凍結されているのは読売の報道とは一部異なり、千葉大・京都大・慶應大・国立がん研究センター)。

 このように補助金凍結の原因とされているSIGN研究事件やディオバン事件であるが、いずれも東大は適切な処分をしていない。

 SIGN研究事件については、東大病院は6月24日に「SIGN研究に関する調査(最終報告)について」と題し記者会見を行った。

 しかし、この記者会見は「最終報告」とされているものの、研究代表者である黒川峰夫教授らの責任関係については認定されず、質疑応答の段階になって、当事者の責任関係の認定と処分は別途開かれる懲戒委員会において行うと回答された次第だ。つまり世間一般的にはこの記者会見は最終報告ではなく、懲戒委員会の報告が待たれている状況なのである。

 またディオバン事件については、現東大教授である小室一成氏が深く関与していたことが千葉大の報告書で明らかにされているが、東大は小室氏が千葉大教授時に起きた事件であるとしてなんらの対応もしていない。

 東大がこれらの問題について最後に口を開いたのは、身内である東大医学部の学生から説明を求められた8月25日の学生との対話集会である。

 参加学生に取材したところ「誠実に対応しようとしているとは感じた」とのことであり、集会では「調査を適切に進めていく」と説明していたようだ。