サムスン、現代自動車、SK――。韓国を代表する財閥の総帥には共通点がある。みんな経済犯罪で有罪が確定したあと、大統領による「特別赦免(特赦)」を受けたことだ。「こんなことは繰り返さない」と約束している今の政権だが、経済が低迷するとともに、またいろいろな発言が出始めている。

 「過ちを犯した企業人であっても国民世論次第ではもう一度機会を与えることはできる。その前提は、不当な利益を十分に社会に還元し、雇用を創出するなど経済活性化に献身的な努力をすることだ」

 2014年9月24日付の「世界日報」に黄教安(ファン・キョアン=1957年生)法相のこんなインタビュー記事が掲載されると、産業界では大きな話題になった。

 直後に、崔炅煥(チェ・ギョンファン=1955年生)経済副首相兼企画財政相が「法相発言に全面的に共感できる。景気回復が遅れている状況の中で、企業の投資活性化が大変重要だが、企業人がずっと拘束されていては投資の決定をするのにも制約を受けかねない」などと発言した。

朴槿恵政権の方針大転換に期待

 「毎日経済新聞」(2014年9月26日付)は「崔炅煥、『企業人の赦免・仮釈放に共感』」という見出しを掲げた大きな記事を掲載した。

 「朝鮮日報」も同じ日に「崔副首相も『企業人の赦免論に共感』」と報じた。

 「政権の方針の大転換なのか?」――産業界では期待が一気に高まった。

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朴槿恵(パク・クネ)大統領は大統領選挙期間中から経済犯罪に対する「無寛容原則」を打ち出していた〔AFPBB News

 というのも、朴槿恵(パク・クネ=1952年生)大統領は大統領選挙期間中から、経済犯罪に対しては「無寛容原則」を打ち出していた。

 財閥総帥が重大な経済犯罪を犯しても、「懲役3年、執行猶予5年」という決まった判決が出る。するとそのあとで「大統領特赦」が出るということの繰り返しを断ち切ると約束していたのだ。

 「経済活性化」のために特赦をするのだとしたら、確かに大きな政策転換になる。

 だが、9月29日に会見した大統領府(青瓦台)の経済首席秘書官は、韓国の記者たちからの質問に対して「何も知らない」と語り、慎重な態度を見せた。

 「世論も必ずしも好意的ではなかった」(韓国紙デスク)からか、法相インタビューから1週ほど経過してからは、「特赦論」は急速にしぼんでいる。