この翌19日から、ウクライナ軍は本格的な攻撃を開始し、ドネツクで分離独立派が掌握していた兵器工場を爆破し、破壊した。22日の報道によると、ウクライナ軍の広報担当者アンドリー・ルイセンコ氏は、ドネツク空港周辺での「防衛」攻撃により、分離独立派の戦闘員40人を殺害したと言っている*9。
停戦条項は2週間も持たずに失効し、和平協定は事実上無効化したと言える。
というより、そもそもこの「停戦協定」の目的は、ウクライナの東部国境に沿って西側軍の非常線を設置し、その間にウクライナ部隊を再編成しNATOがロシア封じ込めを準備するための時間を稼ぐことだったようだ。
21日にはリトアニアで、米空軍将軍とNATOの上級司令官らの会議が行われ、ロシアと国境を接する国家群にNATOの地上軍と空軍が駐留する、いわゆる準備行動計画が具体化した。発表された声明によると、バルト諸国およびポーランド、ルーマニアなどロシア周辺国でのNATO軍の展開は10月に開始する予定のようだ*10。
この会議が行われていた全く同時刻に、15カ国から派遣された1300の軍隊は、ウクライナ内で米国とウクライナ軍の連携を伴うラピッド・トライデント作戦の一部である軍事演習を開始した。この演習は9月26日まで続くことになっている*11。
失われていく「スウェーデンらしさ」
「平和を愛し、200年にわたる中立を維持してきた」スウェーデンは、この情勢の中で、西側勢力の一員として、この戦争にも深々と加担していくのだろうか。
結局、スウェーデンはこの選挙以降も、政権交代前と全く変わらず、これまでスウェーデンをスウェーデンたらしめてきた「高度な福祉国家」とか「中立を守ってきた平和主義国」「移民に寛容な国民性」とかいったユニークさを失っていくのだろう。
つまり、他の国家と何ら変わりない国づくりを着々と進めていくということだ。
そして世界はますます不安定になりそうだ。
*9=http://www.cbc.ca/news/world/ukraine-crisis-casualties-climb-despite-ceasefire-1.2773245
*10=http://news.xinhuanet.com/english/euruope/2014-09/19/c_133656933.htm
*11=http://www.reuters.com/article/2014/09/02/us-ukraine-crisis-exercises-idUSKBN0GX23Q20140902, http://www.stripes.com/news/us-army-to-proceed-with-planned-exercise-in-ukraine-1.272551