米国とスウェーデンの諜報機関の緊密な連携も、これに伴う国家の監視権限の拡大も、何ら議題には上らなかった。
スウェーデンはNATO加盟国ではないのだが、米国に追随しNATOの作戦行動に参加し大きく貢献していくというコンセンサスが、少なくとも政党間では暗黙裡に出来上がっているようだ。
現在、地域で焦点化しているウクライナ情勢は、筆者の私見では、全く沈静化する兆しは見えない。状況の悪化に応じて、国防費はほとんど議論されないまま、今後も膨れ続けるのだろうか。ウクライナの状況は、軍事のみならず経済的にも社会的にも、欧州に大きく影響する。
ますます緊迫するウクライナ情勢
ウクライナをめぐる情勢はますます緊迫している。9月5日、ベラルーシの首都ミンスクで両者間の停戦がサインされ、「ウクライナは安定に向かう」とメディアは報道したが、その後も東部ウクライナの分離独立派に対するウクライナ政府軍の砲撃が継続している。
報道では9月17日に市街が銃撃され、市民2人が死亡した。ドネツク当局のアンドレイ・プルギン氏は、「重火器が激しく使用されており、ドネツクの4つの区域が常に爆撃されている」と言い、その2日前にも市民を乗せたバスが砲撃され、現場には6メートル幅の巨大なクレーターが残ったと話している*5。
同17日、ウクライナ首相アルセニー・ヤツェニュク氏は、分離独立派に対する完全な戦闘準備に入るようキエフ軍に命じたと報道されている*6。同首相はNATOに対し、ロシアとの全面戦争になればウクライナを支持するよう呼びかけた。
核を持つ超大国との「全面戦争」が、現実的にはどういったことを意味するのだろうか。
18日には、ウクライナ大統領のペトロ・ポロシェンコ氏が米国議会で演説し、東部の独立派を抑圧するための軍事支援を増加するよう求めた。
議会の広報紙「The Hill」は、「(ポロシェンコ大統領の演説は)ウクライナの夢を守るために我々に呼びかける、非常に熱心な訴えだった」とし、ウクライナに対戦車兵器、地対空ミサイルや弾薬などを送るべきだとする、民主党議員で上院軍事委員会委員長のカール・レビン氏の声を載せている*7。
同議員はウクライナへの武器援助を、何週間にもわたって表明し続けている*8。
米国がウクライナに殺傷兵器を直接供給するようになるのは時間の問題だろう。
*6=http://www.dw.de/fighting-in-donetsk-as-eastern-ukraine-granted-more-autonomy/a-17927705
*7=http://thehill.com/policy/defense/218186-levin-arming-ukraine-up-to-obama
*8=http://thehill.com/policy/international/216457-democrats-push-obama-to-send-arms-to-ukraine