9月14日に実施されたスウェーデン総選挙の大ざっぱな総括は、中道右派政権のフレドリック・ラインフェルト首相が交代し、社会民主労働党(以下、社民党)党首のステファン・ロベーン氏が首相を引き継ぐことになったことと、ファシズムを標榜するスウェーデン民主党が同国第3の政党となったことだ。
さらに特徴的なことは、既成の政党が大幅に支持を失い、いわゆる新興政党が票を伸ばしたことと言える。社民党の勝因を一言で言うと、「政権党である穏健党の支持票が大量に極右党に流れた」からだ。
スウェーデン国民の消極的選択
予想通り社民党が第1党となり、連立を形成して政権を引き継ぐことになったが、同党が獲得した投票は31%だ(上図参照*1)。これは、前回2010年の総選挙時の得票結果からわずか0.4%増えただけなので、国民が喜んで「次期政権を任せたい!」という強力な支持を送った結果、というわけでもなさそうだ。
社民党の得票に、環境党6.8%、左翼党5.7%を合わせても、得票率は半数に満たない43.7%である。つまりこの3党連合は、議会投票で過半数を占めるために必要な175席には15議席ほど足りないことになる。
これまで2期にわたって政権に就いてきた、穏健党が率いる中道右派連合も悲惨な結果だ。穏健党は、前回選挙から得票率を6.7%減らし、23.2%という低率となった。同党と連立してきた3小党、自由党、中央党とキリスト教民主党も、前回から支持を減らしている。
この2大連合の得票差は4.4%と、それほどの大差ではない。有権者にとっては、「どっちに投票しても大した違いはない」ということなのだろう。
「次なるスーパーモデル」も今は昔、急拡大する格差に有権者がノー
敗北が確定した後、ラインフェルト氏と財務大臣のアンダース・ボリ氏は辞任を発表した。ボリ氏は政界からも引退すると宣言した。
昨年、英エコノミスト誌のカバーストーリーで、「世界が学ぶべき北欧諸国: 次なるスーパーモデル」として彼らも賞賛されていたが、それももう「今は昔」だ。
この8年間にわたり政権を率いてきた中道右派は、就任した2006年以降、スウェーデン史上最大の規模で国有資産を売却し、公共部門の民営化、規制緩和、社会福祉の削減と減税を推進してきた。