この結果、社会の不平等が極端に深化した。経済協力開発機構(OECD)の調査では、スウェーデンは社会的不平等が最も急速に拡大している国となっている。

 このコラムでも触れてきたが、教育制度のスタンダードは劣悪化し、学校生徒の成績低下が止まらない。重病患者の病院での待ち時間の長さも、加盟国中ほぼ最高レベルだ。失業率は約7.9%だが、25歳以下の若者と移民、および一部の地域では20%を超えている。

移民・難民の排斥を唱える極右スウェーデン民主党の躍進

極右スウェーデン民主党の選挙ポスターは「組織的な物乞いをストップせよ」と謳っていた

 票を確実に伸ばした唯一の党は、13%と得票を倍増させた極右スウェーデン民主党だ。これにより同党はスウェーデン第3党という大勢力となり、議会にこれまでの20人から、49人に膨張した議員団を送ろうとしている。

 同党は、福祉国家を濫用し、国が現在直面している社会・経済的な問題を生成している諸悪の根源は移民・難民であるとして、増大する社会への不満を吸収して肥大してきた。

 そして政権が交代するとはいえ、新政府を担う社民党とその同盟2党は、恐らくこれまでの路線を大きく変更しようとはしないだろう。

 実際には、2006年まで首相のヨーラン・ペーション氏が率いた社民党が、教育など公共部門の重要な分野を民営化するなどの改革の多くの基礎を築いてきた。これがラインフェルト氏に継承され、政権交代した後、さらに深化され実行されてきた。野党として反対はするものの、社民党は政府の右派政策の多くに暗黙の支持を提供してきたと言える。

 そしてこのたびの選挙後に明らかになった、スウェーデン国民を驚かせた事実は、社民党はこれまでのように環境党と左翼党との3党連立を形成せず、環境党はそのまま政権に受け入れるが左翼党は連立から外し、自由党や中央党と連立しようとしているということだ。

 新政府は、政策路線を右傾化していくということを明確に宣言したということだ。やはり「どっちの陣営に投票しても大した違いはない」ということが実証された格好だ。

 社民党にも、スウェーデンの北欧社会モデルを崩壊させてきた責任は大いにあり、それは政権継承後も継続させるということのようだ。そして今、新たに政権に就くことにはなったが議会で過半数に満たない弱小政府は、前政権と同様、「バランス・オブ・パワー」、拮抗のバランスを決定する勢力となった極右党にも結局は頼らざるを得ないことになる。

 長期にわたって、住みよい社会のモデルとされてきたはずのスウェーデンは、実は国民からも信任を失っており、これが今回の選挙で如実に露呈する結果になったと言える。