2度の大惨事に見舞われたマレーシア航空の上場廃止による完全国有化が決まった。8月6日付の本コラムでも事前に一報していたが、8日、筆頭株主の国営投資会社「カザナ・ナショナル」が保有する69.4%以外の同社未保有株式を、総額約13億8000万リンギ(約441億円)で買収することを決定したというもの。
上場廃止は痛みを伴う再建か、政府依存体質の温存か
たった4カ月の間に発生した、3月の航空機失踪事件、さらには7月の撃墜事件が長年の経営不振に追い討ちをかけ、マレーシア政府は、倒産危機にあったナショナル・フラッグ・キャリアの完全国有化で、「経営破綻で自滅か?」との懸念や憶測を、国の信用でもって払拭するのが得策と判断したというわけだ。
加えて上場廃止により「さまざまな規定や制約を受けず、しかも市場の意見に左右されず再建を可能にさせる合理的な選択」(大手銀行のアナリスト)とする一方、破綻説が一人歩きして一層の客離れが進めば、「5億リンギ(約160億円)と言われる運営資金も年末には底をつく」(航空アナリストのラム・チョンワ氏)との懸念もあり、倒産危機を国有化で回避することが事業存続の意思を明示する残された最後の選択肢だったとも言える。
ナジブ首相はカザナがマレーシア航空の上場廃止による完全国有化方針を発表した8日、「再建へ向けた第一歩に過ぎない」と一刀両断の大改革を目指すと約束し、「痛みを伴う犠牲は避けられない」とも語った。
そのカザナは8月中にもリストラ計画を発表予定だが、上場廃止での“政府お抱え”では「市場の監視の目が行き届かず、過去の歴史からも政府依存のぬるま湯体質が温存される」(同大手銀行アナリスト)との懸念も同時に高まっている。
本コラムで幾度となくマレーシア航空の危機的経営状況を明らかにしてきたので詳細は避けるが、同航空は1997年のアジア通貨危機、さらに同国発祥のアジア最大の格安航空「エアアジア」との近年の競争激化で、「通算約50億リンギ以上(約1600億円)の政府による低利融資や資本注入など、20年近く救済保護を受けてきた」(大手銀行のアナリスト)が、過去3年に、直近の2014年1-3月期の約4億4000リンギ(約141億円)の赤字を累計すると約46億リンギ(約1470億円)にも拡大。
マレーシア最大手銀行「メイバンク」の投資銀行部門、メイバンク・インベストメント・バンクのアナリスト、アジズ氏は筆者の取材に応じ、「営業キャッシュフローも連続のマイナスで深刻」と懸念を示した上、8月中旬予定発表が28日に延期された今年の4-6月期業績は「過去最悪だろう」と分析する。