企業は今、ビジネス環境の変化への対応にかつてないほど苦闘している。技術の進歩、法規制の改正、新たな競合相手の出現、顧客の嗜好の変化により、企業は大幅な戦略の見直しを余儀なくされている。

 その結果、経営トップは、戦略の実現に効果的なアライメント(組織の方向性一致)、マインドセット(ビジネスマインド)、ケイパビリティ(能力開発)の3つの課題に対処しなければならなくなった。米カンファレンスボードが実施した、世界の経営幹部2000名の調査によれば、CEOにとって最も差し迫った課題として挙げられたのは、戦略のアライメントと戦略実行の速度であった(Linda Barrington, “CEO Challenge 2010, Top 10 Challenges”, The Conference Board, February 2010.)。

 効果的な戦略実行は、まずリーダーと従業員が戦略へのエンゲージメント(主体的な関与性)を高めることから始まる。ここ数年、戦略の実行に必要なアライメント、マインドセット、ケイパビリティを築くために欠かせない手段として、学習や能力開発に投資する企業が徐々に増えている。最近のデロイトの調査によれば、2012年に学習と能力開発に使われた費用の総額は12%増加した。これは過去8年間で最大の伸び率であったという(“The Corporate Learning FactbookR 2013: Benchmarks, Trends, and Analysis of the U.S. Training Market”, 2013.)。

 困難な経済状況の中で、戦略を素早く実行するために世界の企業の間では必要な能力の構築だけでなく、従業員のエンゲージメントが不可欠であるという認識が広がっている。

学習と能力開発への投資の必要性

 ところが、学習や能力開発への投資が増加している一方で、マッキンゼーのリポートによれば、学習と能力開発の効果を測定している企業はわずか8%に過ぎないという(“Putting a Value on Training”, Jenny Cermak and Monica McGurk, McKinsey Quarterly Report, 2010.)。