「ビールに枝豆」の組み合わせはいつから始まったのか

“おつまみの王者”枝豆の歴史といま(前篇)

2014.06.13(Fri)漆原 次郎

 さらに、翌1931(昭和6)年7月16日付の読売新聞にも「ビールのさかな 枝豆も乙に」というレシピ紹介の記事が載っている。どの料理も、莢から豆を出して別の食材と和えたり揚げたりと凝っているが、ビールの肴として認識されていたことは分かる。

ビールに枝豆はいまやどこででも見られる夏の風景。

 戦後、1953(昭和28)年には、静岡県農業協同組合中央会発行の雑誌『農業技術研究』に「ビール党に親しまれる枝豆の栽培」という記事が載っている。枝豆の栽培法を紹介する記事だが、冒頭に“いかにも”なリード文がある。

 <新緑したゝる初夏の夕べ、ビールの傍らの小皿にある若々しい枝豆は色と香りと甘味をもつて格別の魅力の中に、ビール党には彌が上に歓迎せられる>

 「ビールの傍らの小皿にある若々しい枝豆」。この文言から、「ビールと枝豆」の構図は冷蔵庫普及以前、すでに成立していたことが分かる。その後の冷蔵庫の普及が、この定番を後押ししたと考えるのが妥当だろう。

旬があるから“気軽なおつまみ”に

 手軽な酒の肴は「おつまみ」と呼ばれる。親指と人差し指で莢をつまんではぷちっと豆を飛び出させて口に入れる。口が空になったら今度はビールを流し込む。文字通り、枝豆は「おつまみ」のイメージがしっくりくる食材だ。

 このつまみのイメージは、枝豆に「旬」があることと関係しているのかもしれない。

 大豆を原料とした日本の食材の多くは通年で供されてきた。豆腐には乾燥した大豆を使えばいいし、醤油も冷蔵を必要としない。納豆も元来は保存食だった。一方の枝豆は、生の豆。収獲したてのものをすぐに茹でて食べるしかない。つまり、常時食べられることを期待された食材ではない。

 1粒1粒の豆の小ささに加え、こうした「夏になったら食べるもの」という食材としての“軽さ”によって、気軽な食材として人びとに認知されていったのではないだろうか。

 気軽なおつまみといっても、どうせ食べるなら美味しい枝豆を食べたい。そこで後篇では、枝豆の味を高める品種開発の手法など、現代の枝豆づくりに注目してみよう。

(後篇へつづく)

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