一方で、外資系企業で働く人材に新規参入は少なく、限られた人材を企業間で競い合って中途採用しているのが実態だ。英語の習得、他文化との交流などの準備を進めれば、外資系でも活躍できる。だからこそ、人材が限られている今、外資系なのだ。
外資系と言っても千差万別なので、ここでは欧米企業の日本法人を前提に話を進めよう。外資系と言うと厳しくて、不安定で、一生安心して働ける場所か、という印象を持たれることも多いだろう。ブラックな日本企業があるようにブラックな外資系企業もある。
培ったスキルが個人に蓄積する外資系、組織に蓄積する日本企業
どっちが良いなんて割り切ることなんてできない。ただ、職場を選択するうえで、組織に埋没せず“個人”として生きていけるようになるためには、どこが適した職場であるかを考えることは大切だろう。
外資系では、個人が自分の能力を発揮することで、組織が動いていく。一方、日本企業では、個人が良き集団の一員になることを前提に、組織が保たれている。
外資系企業でも、日本企業でも、組織の目的はビジネスで勝つことで同じだが、組織を構成するプレーヤーに対する期待には大きな違いがある。
外資系では、働く人は与えられた役割で能力を発揮できる個人であることが大前提で、経営陣、プレーヤーが個々人の能力をチームの成果につなげられるように協力し合って、組織作りをする。
一方、日本企業では、働く人はまず良きチームプレーヤーであることが求められ、個人は集団との一体感と貢献にやりがいを見出す。その結果、外資系では、能力を持った個人が作り上げられていくのに対して、日本企業では、組織のルールと暗黙の了解の下で成果を出せる、組織固有の人材が育てられる。
すべてを一般論にしてしまうのは難しいが、誤解を恐れず、両者の違いを次のページの表にまとめた。組織の基本的な考えが、「個人」をもとにしているのか「集団」なのかがうかがえるだろう。
最も違いがよく分かるのが働き方。各ポジションの役割が明確な外資系では、個人として「私はこの仕事ができます」という客観性で汎用性があるスキルが身につくのに対し、チームでの成果が重視される日系では、組織ならではのスキルとなりやすい。
また、異動を見ても、外資系では日本企業のように人事部が一方的に仕事を決めることはなく、自分の将来計画に基づいて上司との話し合いを通じて次の異動先を決める。