「40~50代、ホワイトカラー、無自覚」

 上記の「パソコン更新難民」は、職種、地域ではなく、基本的には「40代超、ホワイトカラー」に集中している。そして話を聞いてみると「こんなことになると思っていなかった」というITスキルの低いことに「無自覚」な人が多い印象を受ける。必ずしも、高齢者や女性といった、「ITへの苦手感を自覚している」これまでの一般的な低リテラシー層とは合致しないのである。

 彼らは、画面のメニューが変わった、操作の順番が変わったということへの違和感だけでなく、新しい操作手順等を確認した際に、なぜそうしなければならないか、という、パソコン、IT利用のお作法、前提条件の理解が根本的に欠けているようだ。その結果、移行研修を受けても、分かっていそうな若い社員に尋ねても、フォローがうまくできない構図になっている。

 これまでの典型的な低リテラシー層である高齢者や児童へのパソコン講習における「壁」としては、一般に次の2つ、キーボードの壁とマウスの壁が知られている。

【キーボードの壁】

 ・自分の入力したい字がどこにあるか、分からない。

 ・半角と全角、アルファベットとその他文字の扱い、使い分け方法が複雑すぎる。

【マウスの壁】

 ・ポインターの動きと手元のマウスの関係に違和感がある。例えば、高齢者研修ではよくこんなやり取りがあるという。

 「先生、これ以上、ヒモが邪魔で、マウスが右にいきません」

 「一度、マウスを左へ戻してくださいね」

 「先生、カーソルも左に戻ってしまいます・・・」

 ただし、これらのキーボードの壁とマウスの壁は、いずれも習うより慣れろでなんとかなってしまう。文芸作品や学術論文を大量に文字入力するわけではないし、数字はテンキーで打てばよい。マウス操作は、定型的な操作をしていれば体で覚えてしまう。