今回は、巻貝形の生地の中に、チョコレートクリームが入っているパンについて書こうと思う。昔懐かしいパン屋さんには必ずと言っていいほどある、あのユーモラスな形のパンである。
だが、書き始めるにあたって、1つ困ったことが生じた。それは、「チョココロネ」と書くべきか、「チョココルネ」と書くべきかという表記の問題だ。
どちらも耳にするが、どちらが正しいのだろうか。比較的最近に出版されたパンの紹介本で、どうなっているかを調べてみたところ、『焼きたてパンの図鑑 パンと過ごす素敵な時間』(主婦の友社編、主婦の友社、2008年)では、<チョココロネ>とある。一方、『知識ゼロからのパン入門』(日本パンコーディネーター協会監修、幻冬舎、2010年)を見ると、こちらは<チョココルネ>と紹介されている。
どちらも一般に使われていて、特にどちらが正しいということでもなさそうだ。ただ、毎回「チョココロネ、あるいはチョココルネ」と書くのは面倒だし、分かりにくい。そこで、便宜上どちらにするかを決めるためにネットで検索したころ、「チョココロネ」の方が、「チョココルネ」の2倍以上もヒットした。
というわけで、ぐだぐだと前置きが長くなってしまったが、とりあえずは世間の声に鑑みて、「チョココロネ」で進めていくことにする。
「三大菓子パン」が揃ったのは明治30年代
結論を先に言ってしまうと、チョココロネは日本で独自に生まれた菓子パンの1つだ。だが、その誕生については、あまりよく分かっていない。