マット安川 2014年初回の放送となった新春スペシャル、埼玉県知事・上田清司さんを迎え、手掛けてきた県政改革の報告や財政赤字の削減などについて伺いました。地方から見える国政の問題点など、必聴です。

諸悪の根源は「競争がない」「赤字を気にしない」役所の体質

「マット安川のずばり勝負」ゲスト:上田清司/前田せいめい撮影上田 清司(うえだ・きよし)氏
1948年福岡県福岡市生まれ、早稲田大学大学院政治研究科修了。1993年7月の初当選以来、衆議院議員を3期務めた後、2003年8月に埼玉県知事に当選、現在3期目。著書に『法律は「お役人」のメシの種』、関連図書に『熱伝導知事 上田清司』(大下英治著)など。(撮影:前田せいめい、以下同)

上田 本来、役所は役に立つところ、役人は役に立つ人のはずですが、現実にはあまり役に立っていません。なぜか。それは役所に競争というものがないからです。競争がないから効率が悪いし、サービスも悪い。

 江戸時代、南北2つの奉行所があったのはそういうことを見抜いていたからでしょうね。埼玉第2県庁があれば必ず競争するはずです。

 もうひとつ大きいのは、赤字を放っておいても給料がもらえるせいで赤字が苦にならない体質になっていること。人事院勧告で少しはカットするといっても、せいぜい5%ですからあんまりこたえません。

 そういう環境だから、天下の秀才が集まる財務省が国の借金を無軌道に増やしてしまう。厚生労働省にしても、年金が消えたのに気づかなかったりします。

 そもそも人口の推移なんて50年前から分かっていたことです。団塊世代が現役のうちは税収がたくさん入りますが、リタイアしてからはそれが一気に減る。同時に年金とか医療で出ていくお金が増えるなんて、当たり前のことじゃないですか。

 ならば団塊世代がリタイアする前にある程度ためておかなきゃいけないのに使っちゃった。で、足りないから借りましょうなんてことをやっているわけです。頭が悪いというよりも、赤字を苦にしない体質の問題だと思います。

トップが変われば組織は変わる。赤字体質も変えられる

 でも、そこはトップ次第なんです。赤字を気にしろ、サービスを向上させろ、競争可能な効率性を持たせろ。そういうことをトップがずっと言いまくれば、組織は変わります。

 埼玉県庁もそうでした。県庁の職員は基本的には優秀なんです。指示されたことはきちっとやります。少々視野が狭く、10年後20年後を見据えて考えるということは苦手ですが、それでもこちらが大きな方針を示せばちゃんとやってくれます。

 なのに基本的なことができなかったりする。私が来た当初は挨拶も整理整頓もできませんでした。