「世界四大コレクション」の1つであるニューヨーク・ファッション・ウイーク。9月に開催されたファッション界の一大イベントで、「歴史的」なコレクションが発表された。

 「Cabiria」という名の、サイズ12以上の(日本サイズ15号以上)女性をターゲットにした、「大きな女性用」ブランドだ。

 痩せた女性を念頭にデザインされたファッションが主流の中で、体重80キロ以上のモデルがさっそうと舞台を歩く姿が、全米から喝采を浴びた。ニューヨーク・コレクションで標準より大きい女性用の服が紹介されたのは、史上初のことだった。

 ここ2~3年で、太めの女性は「カービー(curvy)」「プラスサイズ」という呼び名になり、大手アパレルメーカーもより大きなサイズの服の販売を始めている。同時に、体重や外見に対する価値観も変わり始めている。

 太った人が大多数になった米国は、確実に太っていることを前向きにとらえ、肯定する風潮になっている。

平均サイズが標準サイズより大きくなった米国

 これまで米国の標準サイズは、2から12だった。日本のサイズでいうと5号から15号だ。ところが2008年に発表された調査では、米国女性の平均サイズは14だという結果だった(Mintel)。平均サイズそのものが、標準サイズからはみ出してしまったのだ。

 サイズ14の目安は、バスト100センチ、ウエスト85センチ、ヒップ105センチだ。

 標準サイズ以上の需要が増えたが、業界としてはこれまでのファッション性重視のラインを変えたくない。しかし、大多数が太めだという現状から社会的プレッシャーが高まった。

 そこで大きめ女性を対象とした「プラスサイズ」が、ほぼ別ラインとして用意された。ほとんどのブランドはネット上での販売のみだが、大手メーカーが次々とプラスサイズ市場へ参入し始めている。

 プラスサイズはだいたいサイズ14から32までの展開だ。32の目安は、バスト150センチ、ウエスト130センチ、ヒップ150センチである。現在、なんと64%の米国女性がプラスサイズに入る。つまり、これまで無視されてきたが、いつの間にかプラスサイズがアパレル業界の最大の顧客層になる時代が来てしまったのだ。

容易ではないプラスサイズ服の生産

 これまで「太め」の女性がアパレル業界から敬遠されてきた理由は、彼女たちの購買パターンにある。