2012年末の大統領選挙で当選した朴槿恵(パク・クネ)現大統領は2つの政策を掲げていた。「福祉の充実」と「増税はしない」だ。
急速に高齢化が進む中で「福祉の充実」は待ったなしだが、その財源をどうするのか。政権発足から半年近く。満を持して発表した税制改正案だが、世論の大ブーイングを浴びてわずか4日で修正する羽目になってしまった。
2013年8月8日、玄旿錫(ヒョン・オソク)経済副首相兼企画財政相は「2013年税法改正案」を発表した。各種の所得控除を大幅に縮小し、これによる税収増を低所得層に対する「子供手当て」の財源など福祉拡充に充てようという計画だった。
発表とともに、すさまじい批判が巻き起こった。年間給与所得が3450万ウォン(1円=11ウォン)という中所得者以上にとって実質的に増税となるため、「福祉拡充のための増税はしない」という大統領公約に反するとの理由からだ。
「中間層に対する税金爆弾」批判にも「増税ではない」
発表翌日の新聞各紙は、「増税案」を厳しく批判した。メディアの批判は特に「中間層を狙い撃ちにした政策」という点だった。「中間層に対する税金爆弾」という表現を使ったメディアも多かった。
翌日の9日。趙源東(チョ・ウォンドン)大統領府(青瓦台)経済首席秘書官が韓国記者の間に姿を現した。前日の経済副首相の説明を補足して、批判を和らげるのが狙いだった。
趙首席秘書官は、丁寧に税制改正の中身を説明して理解を求めたが、記者たちから「増税は公約違反」と詰め寄られると、こう反論した。
「税の項目を新設するとか、税率を引き上げるということはなく、これは増税ではない」
このひと言に、メディアはさらに反発した。
メディアの論調は「増税は公約違反ではないか」という点に集中していた。そこへ「税負担は増えるが増税ではない」という説明では、火に油を注いだようなことになってしまった。
では実際いくらくらい税負担が増える計画だったのか。「中央日報」によると、500大企業の平均年俸である年間5890万ウォンの給与所得者の場合、税負担額は212万ウォンから219万ウォンに7万ウォン増える。大企業の部長級である年所得8000万ウォンの場合、486万ウォンから576万ウォンへと90万ウォン増えるという。