先週の本コラム「自衛隊の歴史的快挙、水陸両用戦隊が『夜明けの電撃戦』に参加」で紹介したように、6月11日よりカリフォルニア州サンディエゴ周辺で、アメリカ海軍・海兵隊の主催による水陸両用戦合同訓練「ドーンブリッツ2013」が実施され、日本、カナダ、ニュージーランドが参加している。
開催直前に、訓練地域から内陸に少し入ったパームスプリングスで米中首脳会談が行われたせいもあり、以前より中国はドーンブリッツに懸念を表明していた。中国にとっては、日本をはじめとする中国周辺諸国が水陸両用作戦能力を身につけることは、中国が画策している海洋覇権確立の妨げとなりうるため、何としても阻みたいのである。しかし、そういう中国自身が最も急速に水陸両用作戦能力を強化していることを忘れてはならない。
アジアで揚陸艦建造を最も多く計画しているのは中国
世界の海軍では水陸両用作戦用艦艇の建造が“流行”している。これは、現代の海軍戦略の趨勢が、陸上作戦地域沿海域から陸上での作戦を支援したり恊働作戦を実施するという「沿海海軍」へ回帰する傾向があるからである。その傾向を象徴する最新型艦がアメリカ海軍や中国海軍の「沿海域戦闘艦」と呼ばれる軍艦である。
それとともに、沿海域に位置する艦艇を基地として、それらの艦艇から海と空を経由して陸上作戦部隊を陸地に送り込み、陸・海・空の軍事力を併用して各種作戦を実施する水陸両用作戦の重要性が再認識されている。
水陸両用作戦というと硫黄島の戦いのような敵前強襲上陸戦と同義と誤解されがちであるが、急襲上陸作戦は水陸両用作戦の一類型にすぎず、「艦艇を基地として海・空・陸の作戦能力を統合して実施するあらゆる軍事行動」が水陸両用作戦である。
今日において、実際にこの能力が最も頻繁に用いられるのは「HA/DR」と呼ばれる大規模災害などに対する人道支援・災害救援活動であることは、アメリカ海兵隊の出動事例が物語っている。
水陸両用作戦の重要性を多くの海軍が再認識している傾向は、水陸両用作戦用艦艇すなわち揚陸艦の建造状況に如実に表れている。すなわち現時点で世界の海軍が建造している揚陸艦は127隻にも上っている。そのうち73隻がオーストラリアを含んだアジア諸国のものである。アジア諸国海軍の中での揚陸艦建造計画トップ5は中国海軍・インド海軍・オーストラリア海軍・韓国海軍・インドネシア海軍である。
このようにアジア諸国の海軍が揚陸艦の建造に力を入れている最大の理由は、言うまでもなく東シナ海、南シナ海、インド洋の島嶼と沿岸域は領有権争いや海洋資源争奪紛争が多発しているからに他ならない。そして、それらの紛争のほとんどに中国が関与している。