およそ250名の陸上自衛隊員を伴った海上自衛隊“水陸両用戦隊”がハワイのパールハーバーに寄港した後、5月31日、カリフォルニア州サンディエゴのアメリカ海軍基地に到着した。

 6月11日から28日(現地時間)の間、アメリカ海軍・海兵隊が中心となり、日本、カナダ、ニュージーランドが参加してサンディエゴ周辺で繰り広げられる水陸両用戦合同訓練「ドーンブリッツ(Dawn Blitz:夜明けの電撃戦) 2013」に参加するためである。

陸・海・空の能力を併用する水陸両用戦のための訓練

 現代の水陸両用戦は、陸上戦闘部隊が洋上の艦艇から海と空を経由して陸に達し、陸上での各種作戦を実施する陸・海・空の軍事力を併用する軍事作戦である。陸上戦闘部隊が海岸線に到達するまでの間、それに陸上での作戦実施の間、いずれも海と空、とりわけ航空機による近接戦闘支援や補給活動が欠かせない。したがって陸上戦闘部隊と海上部隊と各種航空部隊との統合運用能力が水陸両用戦の必須条件ということになる。

 そして、このような21世紀版水陸両用戦に必要な様々なノウハウを訓練し同盟国と共有しようとするのがアメリカ海軍・海兵隊が主催するドーンブリッツなのである。

 水陸両用戦の訓練というと、日本のメディアなどは短絡的に「尖閣諸島奪還訓練」といった見出しを付けたがるが、ドーンブリッツはそのような狭い目的の訓練ではない(もちろん尖閣奪還にも役には立つ)。この演習は、アメリカ海軍と海兵隊が主催しているという性格上、水陸両用戦に関する専門的・総合的な訓練である。

 具体的には、水陸両用戦参加部隊間のコミュニケーション、艦艇への各種資機材の積み込みならびに揚陸、水陸両用強襲車・各種揚陸艇・各種航空機(輸送ヘリコプター、オスプレイ、戦闘攻撃機、攻撃ヘリコプターなど)の揚陸艦からの発進と回収、陸上・海上・航空担当幕僚による戦闘、災害救助・人道支援、補給などの計画立案や指揮統制、陸上作戦部隊に対する艦艇や航空機からの火器支援など、陸・海・空の様々な能力を併用する水陸両用戦のための多岐にわたる訓練が実施される。

太平洋を渡った自衛隊「水陸両用戦隊」

パールハーバーを出港する「ひゅうが」
(写真:Col.Newsham,USMC)

 現在アメリカ海軍サンディエゴ軍港に停泊中の海上自衛隊の艦隊は、“日本的”に表現すると護衛艦「ひゅうが」「あたご」に陸上自衛隊員250名を乗せた輸送艦「しもきた」の3隻で編成された艦隊、ということになる。

 だが、国際社会ではそのような“まやかし表現”は通用しない。NATOの標準的分類に従うと、ヘリコプター空母「ひゅうが」(CVH-181)、輸送揚陸艦「しもきた」(LST-4002)、ミサイル駆逐艦(イージスシステム搭載)「あたご」(DDG-177)からなる水陸両用戦隊ということになる。