フィリピンが日本の若者たちを魅了する理由には、この国が抱える貧困の問題もある。海外で一儲けしてやる、という商売心丸出しの発想では全くなく、貧困問題に向き合いながら、日本人に何か手伝えることはないか、そのうえで事業もできないかと考える優しい日本人の心を持った若者にとって、フィリピンという国は魅力に満ちているのだ。
1日2ドルの収入なのに携帯電話が大好き
深田洋輔さん(30歳)もその魅力にとりつかれた1人。マニラにオフィスを構え、日本の優れた携帯電話技術を使ってフィリピン人の貧困対策に一役買えないかと2012年にやって来た。
「フィリピン人は恐らく世界でもっとも話好きな民族の1つだと思います。みな携帯電話中毒で、いつでもどこでも電話で話し、携帯メールを送っている」
「それもお金がある人ばかりではありません。1日に2ドル、200円ほどしか収入のない人たちが、携帯電話の使用料に40円も払っているんです」
南国のフィリピンでは冬の寒い国々と違い、餓死したり凍死したりする危険性が少ないということなのだろうが、1日2ドルで生活している人が携帯電話中毒というのは日本人の感覚ではちょっと考えられない。
「フィリピンに来て思うんです。日本の常識っていったい何だったのだろうと。世界には全く違う常識で生活している人が山ほどいる。日本にいると世界が見えないことを痛感しました」
深田さんのビジネスは、貧しいけれども携帯電話は生活に欠かせないという人たちのために、「リワード広告」と呼ばれる広告を携帯メールに入れるサービスだ。
携帯電話の利用者がその広告を読むことで、通信料が割引される仕組み。乏しい収入の中から少しでも長く携帯電話を使いたい人たちにとっては広告を読むことは苦にならない。
それならばと深田さんが考えたのが、広告を読んでもらうだけではなく、広告主の商品名をショートメールで打って送り返してもらうことだった。
例えば、読書をしたとき単に読むだけではすぐに忘れてしまう。声に出して読めば覚えておきたい内容を忘れにくくなる。さらに手書きで写せば、記憶される効果はぐんと上がる。