ストックホルムで3夜連続の暴動、車や学校に放火 暴動のスウェーデン首都、やや沈静化

5月下旬の暴動はスウェーデン全土を大きく揺るがした〔AFPBB News

 5月19日にストックホルム郊外で発生した暴動は、1週間ほどかかってひとまず沈静化した。

 だが、車両約150台が放火され、数十人が逮捕され、警察署やスーパーなどの窓ガラスが割られ、ドアが破壊されるなどにより、ストックホルムでの被害額は1000万クローナ(約1億5000万円)に上った。この数字には、他県から派遣された応援隊のコストは含まれていない。

 さらに、暴動は全国のあらゆる移民コミュニティに飛び火した。筆者の住む人口10万の市は、ストックホルムから470キロ離れた通常は静かな街だが、ここでも車両やタイヤへの放火、警察署の建物の窓ガラスが数十枚割られるなどの被害があった。

 英国やオランダなどの各国外務省や在スウェーデンの米国大使館などが、自国民に注意を喚起している。

警官による移民射殺事件で溜まっていた怒りが爆発

 暴動の発端は、ストックホルム郊外のヒュースビー地区に住む69歳のポーランド系移民の男性を、彼の自宅で、彼の妻の目前で警察官が射殺したことだ。ヒュースビーは住民の8割を移民が占める「移民地区」だ。

 男性はこの日、妻とレストランに出かけ、その帰りに数人の若いギャングにつきまとわれ、嫌がらせをされた。男性はナイフをバルコニーから振り回し、「殺してやる」と叫んでいる。

 近所の住民が警察へ通報し、数人の警察官が彼のアパートへ向かったが、妻の証言によると、この夫婦は到着した警察をギャングの一味がまた戻ってきたと思ったのだという。

 警察が到着した時、男性は自室の中へ戻っていたが、またナイフを持ちバルコニーへ出て同様に振りかざしている。警察はアパートに押し入り、目撃者によると5~6発の銃弾を発射した。妻は「警察は頭部を撃った」と証言している*1

 警察は当初、男性を病院に搬送した後で死亡が確認されたと発表したが、後に、男性は発砲後に死亡し、真夜中2時に現場に到着した霊柩車が遺体を運んだということが判明した。付近の住民は救急車両は来なかったと証言している。

 この翌日、近隣住民の1人は、タブロイド紙アフトンブラーデットのインタビューに答えて、こういう疑念を発している。

 「特別に訓練を受けた武装警察官という『ギャング』らに対し、老人がナイフで自衛しようとしたのだ。なぜ警察は発砲したのか。本当に殺す必要があったのか」

 これが暴動を起こした若者ら全員の疑念だろう。暴動にかかわった多くの若者が、この発砲事件が起爆剤になったと話している。

*1http://hbl.fi/nyheter/2013-05-23/453556/dodsskjutningen-en-brutal-overdrift-av-polisen