前回のこのコラムの記事が掲載された7月22日、ノルウェーで起きた「同時多発テロ」は、欧州をかなり深刻な混乱に陥れています。
いまこの原稿を翌23日、北イングランドのシェフィールドで打っているので、インターネットを通じて見る以外、日本語の報道は目にすることがなく、主として英国国内のメディアを通じて、この「テロ」の、判明している範囲での報道がなされています。
ノルウェーのオスロでは22日午後3時半頃(日本時間午後10時半頃)首相官邸などの入った官庁街で大規模な爆発があり、本稿を打っている時点で、少なくとも7人が亡くなったと報じられています。ノルウェーのストルテンベルク首相は無事だったとのこと。
自動車に仕かけられた爆発物によるものと見られ、報道の初期には「イスラム原理主義者による犯行か?」「ビン・ラディン氏殺害に対する報復ではないか?」といった憶測も見られたようです。
爆破と銃撃の犯人はキリスト教原理主義者を名乗る
ところがその数時間後、オスロから50キロほど北西に離れた湖沼の島「ウトヤ島」で惨劇が起こります。
この小島では、与党労働党の青年部が主催する青少年政治討論キャンプが開かれていました。ここに、警官姿の男が姿を現し、捜査であるとして参加者を整列させたのち、突然発砲し始め、本稿の時点では80人以上が殺害されたと報じられています。
ウトヤ島で犯人として捕らえられたのはノルウェー人青年、アンネシュ・ブレイビク容疑者(32)で、自身をノルウェー極右派のクリスチャンであるとし、ノルウェーの移民受け入れ政策などに抗議して行ったもので「犯行は非道だったが必要なものだった」などと弁護士に述べているとのことです。
「イスラム原理主義」ではなく「キリスト教原理主義」という言葉に、英国の報道機関もかなり戸惑いを見せていました。
「『キリスト教原理主義』? 少し前であれば、こんなことをするのは『イスラム原理主義』しかいない、という話になったはずなのに・・・」
「白人の、ノルウェー極右の若者がこんなことをするなんて・・・」
翌日の英国のテレビはどのチャンネルも判で捺したように「考えられない」を繰り返しながら、「子供の安否がまだ分からない」「心配する親たち」といった情報を流していました。