本稿が掲載される頃、米カリフォルニア州で米中首脳会談が開かれる。中国メディアはその意義を盛んに宣伝するが、欧米の識者は「具体的成果は期待薄」などと概ね冷ややかだ。それでも、今回の首脳会談の結果は今後の米中関係の方向性を占ううえで極めて重要であろう。
今回は静かな保養施設で2日間、プライベートで非公式な会談も行う。成功、失敗にかかわらず、米中間の詳細なやりとりが表に出る可能性は低いだろう。されば、今回も筆者の独断と偏見により、両国首脳の思惑を勝手に想像してみたい。関連報道を読む際の参考になれば幸いである。(文中敬称略)
新型大国関係
今回の首脳会談のキーワードは「新型の大国間関係(新型大国关系)」だろう。しかし、その具体的内容について米中の見方は大きく異なる。
まずは、今回の会談に向けた中国側の「思い入れ」の強さを中国メディアの報道で検証してみよう。
以下は5月30日付人民日報日本版の解説記事の概要だ。いかにも中国らしい、「ジコチュウ」の塊のような情勢認識ではないか。
●中米の新型の大国間関係という提起の仕方は、2012年2月の習副主席(当時)訪米時に遡る。・・・(その後)ヒラリー・クリントン国務長官も事実上、新型の大国間関係の構築に関する習副主席の提案に間接的に応じた。
●これを踏まえて、胡錦濤国家主席(当時)は2012年5月3日の第4回中米戦略・経済対話で「互恵・ウィンウィンの協力を推進し、新型の大国間関係を発展」と題する開幕の挨拶をし、・・・新型の大国間関係の具体的中身を初めて明らかにした。
●ここに至って、新型の大国間関係をいかに構築し、発展させるかが両国上層部の共通認識となり、両国関係発展の新たな目標を導くものとなった。米国の知中派の専門家は・・・(オバマ大統領が)新型の大国関係の構築という中国側の提案に前向きに応じるよう次々に提案している。
●トム・ドニロン米大統領補佐官は(本年)3月11日に講演した際、米中による新型の大国間関係の構築について米側の構想を初めて明らかにした。・・・(習国家主席就任の際)オバマ大統領は祝電で「双方が戦略的角逐ではなく健全な競争に基づく新型の大国間関係の構築に共に努力すること」の重要性を強調した。
●朝鮮半島情勢がにわかにエスカレートすると、米側は中国と新型の大国間関係を構築することの必要性をより差し迫って感じるようになった。ホワイトハウスは習近平主席がメキシコなど中米3カ国を近く訪問することを知ると、米国でオバマ大統領と特別な会談を持てないかと中国側に急遽打診してきた。