アジアに出張するたび、日本を飛び出て活躍する若者が増えていることを実感する。私の取材対象が大手企業から新興企業に変わってきたという背景もあるが、とにかく元気な若者たちの活躍がまぶしい。
日本発、電気で走るバイクに世界が注目
記者になりたての頃は、先輩から「できるだけ老けて見えるようにしろ」と注意を受けたものだ。主に大手企業の社長や役員が取材対象だったから、若造だとバカにされないようにとのアドバイスだった。
それが今や大半の取材対象は年下になった。先日、マニラで会ったテラモーターズの関鉄平さんは、大学を卒業して2年目。たった1人でフィリピン全体の市場開拓を任されている。
何と私の娘と同い年。時の流れの速さを思い知らされた。
テラモーターズは2010年に日本で誕生した電動バイクメーカー。ガソリン車からEV(電気自動車)へという流れを二輪車の世界に真っ先に取り込んで、世界をリードする二輪車メーカーになるのだという。
同社の設立趣意書の中で徳重徹社長は「日本発のベンチャー企業として、サムスン・アップルを超えるインパクトを世の中に残す企業になります」と書いている。大きな夢を持ったベンチャーだ。
関さんは、慶応大学在学中から世界中を旅して回り、日本がいかに井の中の蛙であるかを痛感していた。
語学が堪能、胆力もあることから近年では最も厳しい就職氷河期にあった2011年の就職戦線でも、大手総合商社や超有名ベンチャーから早々に内定を受けていた。しかし、テラモーターズに出会うと迷うことなくこちらを選んだ。
「きつい縦社会で若者に挑戦させてくれない大手企業は若者を飼い殺しにして自らの成長チャンスを消していると思うんです」
「もっとも慶応では安定した企業でお決まりのコースを歩みたいという学生も多かったですよ。でも、若いときに時間を浪費してしまうと後で取り返しがつかないでしょう。そういう意味で私はベンチャーの方に強い魅力を感じます」