所用でハンブルクに行ったら、異常に寒かった。もっとも、今、ドイツで異常に寒いのはハンブルクだけではない。5月は、1年で一番素晴らしい季節と言ってもよいはずなのに、今年は中部や南部ドイツの標高の高いところでは雪が降っている。
ドイツ人が5月を心待ちにしているのは、モーツァルトの「Komm, lieber Mai」(おいで、愛しの五月)を聞けばよく分かる。子供たちが、「5月よ、菫の花やカッコー鳥を持って、早く来てちょうだい」と呼びかける歌だ。
ドイツの4月はまだまだ天候が安定しないが、5月になると、春はここぞとばかりに威力を発揮する。暖かい太陽が降り注ぎ、木々の若葉が日に日に鮮やかになっていく。なのに今年はどこもかしこも寒いうえに雨ばかり。5月末に、皆が冬の分厚いコートを着ている。
過去2度の大破壊、怒濤の歴史をくぐり抜けた国際都市
さて、ハンブルクの魅力とは何か?
ハンブルクは人気の都市で、ドイツで一番、住民の幸せ度が高いというようなアンケート結果もある。それどころか、ハンブルク人に言わせれば、世界で一番美しい町だそうだが、普段から雨は多いし、風はきついし、冬は特別寒いし、何が良いのか私にはよく分からない。
もちろん、かつてのハンザ都市の国際的な雰囲気はある。世界中の船乗りが集まったという雑多で猥雑な港町の名残もあれば、いまだに栄える有名な娼婦街もある。
また、北ドイツの商業都市の凛とした気品もあるし、貿易港の活気もある。町の真ん中に横たわる内アルスター湖、外アルスター湖の優雅なたたずまい、そして、その畔に連なる超セレブの豪邸と、何でもありの個性的な町でもある。
自由の空気がみなぎっていて、こうでなければいけないという固定観念がない。大金持ちも貧乏人も、胸いっぱいに呼吸のできる町?
でも私は、なぜかあまり好きになれない。何度訪れても、この町に包み込まれるような気分にはならない。これは素晴らしいと思う美術館に巡り合ったこともない。エネルギッシュで魅力的なのは、港だけだ。
ただし、これは私の独断と偏見なので、読者諸氏がハンブルク観光の計画を中止するには及ばない。
美術館よりも面白いのは市庁舎だ。ハンブルクの市庁舎は、お城のような堂々たる威容を誇る、いわゆる町のランドマーク。ガイド付きで、中を見学できる。