MRIC by 医療ガバナンス学会 発行

 2011年6月某日、私は福島県の相馬市に初めて降り立った。この年の3月、大震災に見舞われた地である。

被災地支援として陸上教室を通じて感じたこと

 相馬高校の子供たちへの陸上教室ということで私たちはやって来たのだが子供たちの状態がどうなのか? そしてそんな私たちにできることがあるのか?

 そんな不安を持ってこの被災地支援教室を開催した。

 「はじめまして」「よろしくお願いします」

 子供たちからは緊張の色が窺えた。この緊張をどうほぐすか? ここがスゴくポイントだったのだが、ここで大活躍だったのが100メートルスプリンターの菅野優太。

 すでにかけっこ教室などで主に小学生を教えている経験は大きくて子供たちのハートをすぐに掴んだ。そこからの子供たちは元気で、普段私が教えている陸上部やかけっこ教室の子供たちと変わらなかった。私が教える内容も全く同じものを提供した。

 菅野優太が子供たちのハートを掴み、私が想像以上のバネを披露し昨年まで400メートルの現役だった寺田克也が天才的なスピードを見せつけ子供たちや顧問の先生方は驚き、楽しみ、普段味わえない素晴らしい時間を過ごせたのではないかと思う。

 最後のリレーでは子供たちや先生方からは「すげー!」「おー!」「早い!」などの言葉が飛び交った。終わる時には「ありがとうございました、またよろしくお願いします!」「次はいつ来るんですか?」ほんの3時間程度の時間でこの場にいる人たちが一体となったような気がした。

 今回のポイントは指導に当たったアスリート3人が、普段と変わらない接し方をしたのが良かったのだと思う。普段と違う接し方をしていたらきっとこの教室の空気感はかなり違ったものになっていたのではないかと思う。きっと直感的に私や菅野優太、寺田克也はそう感じていたのかもしれない。

 スポーツ(運動)の良いところは何の条件もなく、仲間になり、楽しめる魔法のコミュニケーションツールだと私は感じている。ましてや、ここに指導力を兼ね備えたトップアスリートが教えにきたら子供たちに与えるインパクトはかなり大きく、それでいてかなり良質なインパクトを伝えることができる。