ユーロ発足以来、欧州経済は最大の危機に直面した。財政破綻したギリシャはユーロ圏に踏み止まれるのか、スペインやポルトガルは・・・。PIIGSに貸し込んでいた欧州系銀行はどうなるのか、果たして「第2のリーマン・ショック」が・・・

 一方、米国では英BPの原油流出事故が発生。2010年11月の中間選挙を控えて、オバマ政権がポピュリズム色を強める。日本は菅直人政権が発足し、消費税増税を含む財政再建を掲げて参院選に突入。経済成長と緊縮財政の両立という、極めて困難な課題を背負う。

 こうした中で、ウォール街は世界経済の先行きをどう読んでいるのか。世界有数の金融サービス機関である米プリンシパル・ファイナンシャル・グル―プの資産運用部門、プリンシパル・グローバル・インベスターズ(PGI)のジム・マッコーガンCEO(最高経営責任者)が来日し、JBpressの単独インタビューに応じた。(取材は2010年6月18日)

ギリシャが迫られる決断、リスケかそれともユーロ離脱か

 JBpress ギリシャ危機はスペインやハンガリーなどへも飛び火し、ユーロに内在する矛盾が一気に吹き出したように見えるが。

ジム・マッコーガン氏
米プリンシパル・グローバル・インベスターズCEO(最高経営責任者) 英ケンブリッジ大卒 米オッペンハイマー・キャピタル(ニューヨーク)COO(最高執行責任者)やクレディ・スイス・アセットマネジメント・アメリカCEOなどを歴任 資産運用業務で30年に及ぶキャリアを誇る
(撮影・中野哲也)

 ジム・マッコーガンCEO 単一通貨から発展して単一の財政政策まで移行していれば、現在のような問題は起こらなかっただろう。(財政赤字の対GDP比3%以内などの)約束を加盟国が破った場合の制裁措置も確立していなかった。

 仮にギリシャ政府が増税や歳出削減などの緊縮政策を断行し、欧州連合(EU)や国際通貨基金(IMF)との約束を守ったとしても、3年後には公共債務残高の対GDP比率は150%にも膨らんでしまう。これは持続可能なレベルではない。

 問題の解決には2つの方法がある。1つはリスケジュール(返済繰り延べ)であり、部分的にデフォルト(債務不履行)が発生することになる。今は欧州各国の首脳が「そんなことはやらせない」と言うが、結局はやらざるを得ないかもしれない。2つ目はギリシャなどがユーロから離脱し、旧通貨に戻すことだ。

 ギリシャは国が制御不能な状況にあるが、スペインやポルトガルはそうではない。しかし、両国は労働市場の規制問題を抱えている。

 ユーロ導入以来、スペインの単位労働コストが約40%も上昇する一方で、ドイツは若干だが低下している。スペインは競争力を喪失した結果、失業率が20%前後まで悪化している。最低賃金引き下げなど労働市場でサプライサイドの改革を迫られており、実現できなければ惨憺たる状況に陥ってしまう。

IMF、ギリシャへの融資第1弾を実施

ギリシャはユーロから離脱するのか?〔AFPBB News

 ギリシャなどがユーロにとどまり、リスケもしないとなると、その分をドイツなどの納税者が負担する必要がある。しかし、彼らがそれに「Yes」という雰囲気ではない。

 ━━ ギリシャがユーロから離脱する確率をどれぐらいと予想するか。

 マッコーガン氏 個人的な見解だが、ギリシャが5年後にユーロに残留している可能性は30~50%しかないと思う。もちろん状況がどう変化していくか予測は難しいし、究極の政治的な選択になる。