ベトナムの国名はベトナム社会主義共和国であるが、その国名から「社会主義」が消え、ベトナム民主共和国となるかもしれない。

 この国名は、1945年、ホー・チ・ミン主席が独立宣言をした際のものであり、ベトナム戦争後の1976年、ベトナムが統一されるまでは北ベトナムの国名であった。

 これまでにも国名変更の話題は上っていたが、「社会主義」を外した「ベトナム共和国」は旧南ベトナムの国名であり、「共和」を外した「ベトナム国」はフランスが樹立した国名となってしまうという笑い話も囁かれた。今回の国名変更は、憲法改正議論の中から生じたものである。

憲法改正への道程

ベトナム人から「バック・ホー(ホーおじさん)」と呼ばれるホー・チ・ミン(ウィキペディアより)

 ベトナムでは、2013年10月に開会される国会で憲法改正が行われる予定である。現行憲法は1992年ベトナム社会主義共和国憲法であり、1986年から始まったドイモイ(刷新)を反映していることからドイモイ憲法とも称される。2001年に一部が改正されたが、今回は全面的な改正を目指している。

 現憲法の下では、憲法改正の権限は国会に属する。2001年の憲法改正の際も国会決議によって行われている。国会決議とは、いわゆる法令の一種である。

 今回の改正においては、2012年10月に国会の憲法起草委員会が起草した憲法草案について、10月22日から11月23日まで開会された第13期第4回国会で議論された後、国民からの意見聴取を行うことが決まり、「1992年憲法改正草案について国民からの意見聴取を実施する国会決議」が11月23日に採択された。

 2013年1月2日から3月31日まで憲法草案に対する国民からの意見聴取が行われ、国会ホームページでも意見が受け付けられた。憲法改正起草委員会が同意見を取りまとめ、10月開会の国会で憲法草案に対する審議・採決がなされることになっている。

憲法草案の論点および意見聴取方法

 憲法草案は、(1)人民主権の原則、(2)立法、行政、司法を担う国家機関の間の組織原則、(3)人権および公民の権利に関する原則が柱となっている。

 周知のように、ベトナムはベトナム共産党一党制の社会主義国であることから、ベトナム語では、国民ではなく人民(nhân dân)が、市民ではなく公民(công dân)の文言が使われる。