このように、韓国は、わが国の防衛あるいは安全保障上のバッファーゾーン(緩衝地帯)を形成している。

 日本は韓国防衛にとっての生命線であり、同時に、韓国は日本防衛にとってのバッファーゾーン(緩衝地帯)である。つまり、日韓は、戦略的相互依存の関係にあり、その認識を共有して国家間関係を着実に発展させることが重要なのである。

わが国も「嫌韓」感情を克服し、日米韓の防衛協力の強化を

 2012年4月、朝鮮労働党第一書記と北朝鮮国防委員会第一書記に就任した金正恩は、その直後、「人工衛星」と称するミサイルを発射した。今年(2013年)に入って、北朝鮮の暴走が止まらない。

 国連安全保障理事会は、北朝鮮が2月に実施した3回目の核実験に対する制裁決議案の採決を行い、全会一致で採択した。この制裁決議に反発し、北朝鮮は3月8日、南北軍事境界線にある板門店の南北直通電話を直ちに断絶するなどとぶち上げた。

 さらに、「停戦協定の白紙化」「ワシントンを火の海にする」「日本の米軍基地はミサイルの標的だ」などと情勢をエスカレートする瀬戸際外交を繰り返しており、一歩間違えば、一触即発の事態へと急展開しよう。

 万一、朝鮮半島有事が起これば、日本は、国連軍あるいは在韓米軍そして韓国軍の生命線となり、後方兵站基地としての重要な役割を果たすのは、朝鮮戦争当時と同等、あるいはそれ以上のものとなろう。

 韓国は、国防白書において「北朝鮮政権と朝鮮軍は韓国の敵」と明確に位置付けている。同国は、北朝鮮と戦える万全の体制を整備しなければならないはずだが、その後方を支える日本に対して「反日政策」を採っている。

 韓国の朴槿惠大統領は、5月7日の米韓首脳会談において「北東アジア地域の平和のためには日本が正しい歴史認識を持たなければならない」と述べ、オバマ米大統領に異例の日本批判を展開した。

 前方を敵の北朝鮮、そして後方を「嫌韓」感情に追いやっている日本に挟まれた態勢の下で、自国の防衛を果たし得るとでも考えているのであろうか。

  韓国の安全保障あるいは防衛上、日本の協力が不可欠であるとするならば、同国の外交上の反日政策は明らかに論理矛盾を来しており、戦略的一貫性が保持されていないことになる。

 核・ミサイルの開発をはじめとする北朝鮮の脅威が高まり、挑発が続いている今日、韓国は外交と安全保障の戦略的矛盾を早急に調整し、日米韓の安全保障協力を強化する方向に向かって確かな歩みを進めなければならないのではないか。

 それとも、清朝中国までの冊封体制下に甘んじていたように、親中路線へ「先祖返り」しようとしているのか。韓国の現状は、そのような疑念を持たれても致し方ない迷走状態にあるようにも見えるのだが・・・。

 果たして、韓国はどこを向こうとしているのか、今後の外交・安全保障の基本路線の選択いかんによってその将来を大きく左右されるのは間違いない。

 他方、わが国は、朝鮮半島の地政学的意義を再確認し、大陸勢力による同半島の支配や影響力の拡大を阻止する不断の努力が必要である。

 そのためには、多くの日本人の中に高まっている「嫌韓」感情を断ち切り、わが国の地政学的宿命に従い、「国益」を優先することである。

 すなわち、韓国を同じ陣営の一員として引き止め、安全保障・防衛協力を強化しなければならない。そして、朝鮮半島情勢を日米韓にとって有利に導くよう、常に3者の共同行動を念頭に、結束を強める途を模索していくことが重要であると言えるのではないだろうか。