朝鮮戦争当時、わが国は占領下にあり、大戦の後遺症もあって非公然の「隠れた役割」しか果たすことができなかった。しかし今日、「周辺事態法」などが整備され、国家として組織立った協力を行える一応の体制ができている。
憲法の制約上、自衛隊の活動は、あくまで「非戦闘地域」に限定され、米軍の「武力行使との一体化を避ける」内容になっているが、朝鮮戦争当時と比較して、はるかに広範多岐にわたる役割を果たすのは間違いなかろう。
韓国防衛に不可欠な在日米軍の来援と自衛隊との連携
韓国陸軍の主要部隊の配置は、北朝鮮と対峙している軍事境界線の防衛任務を持つ第1軍を東部戦線に、第3軍を西部戦線に並列して配置し、その後方地域防衛のために、第2軍を配置している。さらに、首都ソウルの防衛のために、大統領直属の首都防衛司令部を配置する体制をとっている。
第2軍は、北朝鮮の侵攻時に予想される後方地域へのゲリラ・コマンド攻撃、空挺攻撃などによる後方撹乱や浸透作戦を阻止するとともに、第一線部隊に対する後方兵站支援、予備役の動員・訓練、避難民の保護などの任務を果たすものと考えられる。
このため、第2軍の任務はわが国自衛隊との関係が深く、同司令官と九州および南西諸島の防衛警備の責任者である陸上自衛隊西部方面総監は定期的に相互訪問して、意見交換を行っている。
また、韓国南方海域で、海上における日米韓共同訓練を行うとともに、航空自衛隊西部航空方面隊司令官と韓国空軍南部戦闘司令官相互の交流など、部隊レベルにまで踏み込んだ防衛協力・交流が進んでいる。(以上、資料源は防衛白書)
これらは、明らかに、朝鮮半島有事の相互協力を睨んだものと見て間違いないであろう。
他方、在韓国連軍(在韓米軍主体)は、第2歩兵師団、第19戦域支援コマンド、第35防空砲兵旅団等からなる米第8軍と第7空軍(F16×40機を含む作戦機約60機)を主力とする部隊である。
首都ソウルに、国連軍司令部、米韓連合軍司令部及び在韓米軍司令部が置かれ、米第8軍司令官がそれぞれの司令官を兼任している。
国連軍司令部では、国連軍参加各国の代表(大使館付駐在武官)が、情報交換や情勢分析などのため、定期的あるいは随時に会合を開いている。
前述の通り、わが国には国連軍後方司令部が置かれ、司令部には司令部の要員として4人が常駐している。
そのほか、各国大使館に駐在武官の兼務を含めて23人の連絡将校団が常駐し、3~4カ月に1回程度の頻度で、情報交換や必要な連絡調整のための非公式会合が行われている。
このように、韓国の防衛には、在日米軍の来援ならびに自衛隊との連携が不可欠であり、韓国の命運はそれらに大きく依存しているのである。