5月12日放送の『中山泰秀のやすトラダムス』(Kiss FM KOBEで毎週日曜24:00-25:00放送)では、北朝鮮の対中戦略について解説したほか、日本維新の会の憲法改正論議をめぐる主張や、精神科医の故・小田晋氏による性犯罪抑制の取り組みなどについて語った。

北朝鮮の脅しに最も反応したのは日米韓ではなく中国

中山 ワシントンで7日、オバマ米大統領と韓国の朴槿恵(パク・クネ)大統領による米韓首脳会談が行われました。

 緊迫した朝鮮半島情勢が一定の落ち着きを見せ始める中、北朝鮮に対するメッセージが注目されましたが、どんな協議がなされたのでしょうか。時事通信が次のように伝えています。

北朝鮮が「ムスダン」ミサイルを発射台から撤去、米当局者

故金日成主席生誕100年を記念して平壌で行われた軍事パレードに参加したムスダン級ミサイル〔AFPBB News

 「対話の再開に言葉の重心を置きつつ非核化への行動を呼びかけた。しかし、北朝鮮が応じる見通しはない。具体的な出口戦略がないことも浮き彫りになった。北朝鮮に距離を置き始めたかに見える中国の動きが今後のカギを握りそうだ」と。

 記事が指摘している通り、米国も韓国も北朝鮮に対して取るべき対応を分析できていない気がします。

 一方の中国ですが、これまでは国連安全保障理事会や6者会合で北朝鮮制裁について論議されるたびに、拒否権を行使して北朝鮮の擁護に回ってきました。それが今回、ついに国連安保理決議に同調し、口座凍結や取引停止などの金融制裁を本格化させています。

 これは、北朝鮮が繰り返すミサイル発射の脅しに対し、中国がさすがにこらえかねて制裁行動に踏み切ったという見方ができるでしょう。

 しかし、中国の行動を北朝鮮はあらかじめ見越していたと私は見ています。すなわち、新型中距離弾道ミサイル「ムスダン」を発射しようとした今回のシグナルは、北朝鮮が中国に対して戦略的に行ったのではないかということ。

 北朝鮮問題とは、簡単に言えば米国と中国による北朝鮮の政治的な奪い合いです。中国にしてみれば、北朝鮮は国境線上で接していますが、北緯38度線を越えると在韓米軍のいる民主主義国家・韓国があり、そのさらに東には日本があります。

 もし、いずれ北朝鮮が鎖国状態を開放する時が来た場合、こうした冷戦時代の西側諸国と手を結ぶのか、それとも中国やロシアなどの東側諸国に仲間入りするのか。そのどちらに比重を置くかが、北朝鮮の今後を左右するターニングポイントになるはずです。