尻尾が犬を振り回す――。国民新党という名の「尻尾」が民主党政権を、いや日本全体を振り回している。
2010年6月10日、菅直人首相が今国会での郵政改革法案成立の見送りを決断。すると、国民新党の亀井静香代表は「約束を破られた」「男の美学でもある」と捨て台詞を吐きながら、郵政・金融担当相を辞任した。
しかし、その実態は「美学」でも何でもない。小党の党首が保身を図るために演じた茶番劇でしかない。
伏線は6月4日の連立合意書、「図る」ではなく「期す」に
6月4日に開かれた党首会談で既に伏線があり、茶番劇は始まっていた。代表選で圧勝を収めた民主党の菅直人新代表が亀井代表と連立合意書を交わし、郵政改革法案への対応について「速やかな成立を期す」と明記した。
その直前まで霞が関の関係官僚は合意書の表現が「期す」になるのか、「図る」になるかを固唾を呑んで見守っていた。最終的に「期す」で決まると、霞が関は「亀井大臣は今国会中の成立を断念し、茶番劇のシナリオを書いたな」と判断した。
警察官僚から政界に転身し、衆院当選11回。百戦錬磨の亀井氏は政局を読む力に優れ、自民党離党後も2005年の郵政選挙でホリエモンを破るなど、永田町でしぶとく生き延びてきた。
菅新内閣の誕生で6月16日閉幕までのタイトな国会日程では、郵政改革法案の成立は不可能――。当然、亀井氏は計算したはずである。
時代錯誤の「官営メガバンク」を目指す国民新党
国民新党の唯一の生命線が、「集票マシーン」である全国2万人の郵便局長で組織する全国郵便局長会(全特)。同党の政策は郵政の「官業回帰」一本槍であり、そのためには他の政策はどうでもよいように見える。