それから、この時間を使って日本の防衛力を高めること。しかもそれは警戒・監視機能だけではなく、相手を踏みとどまらせるための抑止力たる陸上戦力の強化も重要となるが、ここがいま一つ理解されていないように感じてしまう。
そんな中、陸上自衛隊の部隊で今、最も脚光を浴びているのは、長崎県佐世保市にある「西部方面普通科連隊」(西普連)だ。
創設は2002(平成14)年で、今から10年前、約2500に及ぶ離島防衛や災害派遣などのニーズに応えるべく立ち上がった比較的新しい部隊である。昨今は「尖閣防衛」という大テーマが課されており、自ずとその訓練や装備にも変化が生じているようだが、おそらく当初から今のような状況も見据えていたのだろうと思う。
これまでいろいろな部隊を訪問させていただいたが、ここに足を踏み入れると独特の雰囲気があった。なにせ、すれ違う隊員さんが皆レンジャー徽章を着けている。そして、ここ相浦駐屯地内は訓練設備が充実し、待ち時間なしで常に誰しもが何かの訓練にあたっているというから気合の入りようが分かる。
やっていることも特殊で、ボートを使って目的地に進出し、ある地点から遊泳斥候員が泳いでいくといった、いままで陸自に求められなかった訓練も多々ある。着衣のまま重い装備を背負っての長距離水泳、また、上陸後の速やかな作戦行動、一発必中の射撃能力、そして何よりここで訓練に励んでいる彼らの目には刺すような鋭さがある。
西普連はまさに日本の切り札と言ってもいい部隊だ。抑止力を高めるためには、彼らのような精鋭をどんどん育成し、さらに「海兵隊的な」機能を付与する必要があるとよく言われる。確かにその通りである。
北海道は重要な練兵場
しかし、再三述べているように、陸海空自衛隊にプラスアルファの組織を作るのならともかく、縮小傾向の中で一部分を強化しようとすれば、どこかを削らなくてはならない。