最近、雑誌やテレビなどで「日中もし戦わば」とか「開戦シミュレーション」といった特集をよく目にし、また私自身もそうした内容の執筆を依頼されることもあるが、何を以て「開戦」なのかは近年、曖昧になってきている。いきなりミサイルをぶち込まれたり、鉄砲を持った兵士が大挙してやって来るといったことは考え難い。

 先日これらについて議論していた際、ある将官OBの方が「これは消耗戦ではないか」とつぶやかれ、蓋(けだ)し納得であった。

 海上保安庁は1万人余りというかなり厳しい人員と装備を駆使して南西海域の警備を強化し、海上自衛隊の護衛艦や哨戒機による警戒・監視活動もますます多忙を極めている。航空自衛隊の領空侵犯対処も同様である。

 ただでさえ縮小している人員と予算であるのに、この状態が長く続けばどうなるのか?

 確かに、短期決戦では今のところわが方に利があると思われるが、そんなことは承知の相手があえて眠れる獅子を起こすような真似はしないだろう。

 中国が「法律戦」「心理戦」「輿論戦」の『三戦』を実施していることは「防衛白書」にも明記されており、周知の事実だ。

 自国本位の法律を作り、他国民のマインドに入り込み世論を都合のいいようにコントロールする、それらがすでに行われているとすれば、すでに戦争状態に置かれているのであり、敵の戦力を徐々に奪っていくという、これがまさにゲリラ戦なのではないか。そして双方は今、長期消耗戦という次の段階に入っていると言えるのかもしれない。

求められる長期の戦略

 そのように考えると現在やらねばならないのは、まず海保や自衛隊が活動するための燃料費や人繰りなどについて余裕を持たせることだろう(国民の国防意識を取り戻す必要は言うに及ばず)。