MRIC by 医療ガバナンス学会 発行
2010年から、厚生労働省で「チーム医療」に関する3つの検討会(「チーム医療推進会議」「チーム医療推進のための看護業務検討WG(以下、「看護業務検討WG」とする)」「チーム医療推進方策検討WG」)が開かれている。目的は、臨床現場において医師を含めたメディカルスタッフがどのように協働し連携し合えるか、話し合うためだ。
特に、看護業務検討WGでは、「看護師の役割拡大」について2年におよぶ検討を重ねている。骨子は、特定の教育や経験を持つ看護師が能力認証を受けた場合、医師の包括的指示で技術や判断の難易度が高い医行為を実施することができるというもの。
当初、「特定看護師(仮称)」という言葉が使われていたが、周囲の意見を取り入れることで「特定能力認証制度」という名称に変更され、制度の内容もかなり変化した。
だが、検討会の終盤戦になって、いまだに、私の疑問は解消されない。
「チーム医療を推進する制度設計という前提にもかかわらず、どうして、看護師だけが医師の包括的指示による特定行為の実施を認められるのか」
他職種にも、安全性を担保しながら、医師の包括的指示でできる業務はある。しかも、今回の特定行為としてあがっている医行為の中には、他職種が日常的に行っている業務が含まれているからだ。
「看護師の能力認証制度」を検討する目的は、そもそも、診療現場における看護師の不安から始まった。看護師のおこなう医行為の中には保健師助産師看護師法(保助看法)の「診療の補助」の範囲内かどうか、必ずしも明確でないものがある。
その中には高度な知識や判断が必要とされる行為も含まれる。そんな時、看護師自身も自分の行為が保助看法に触れているのではないかと気になる。そこで、「診療の補助」に含まれるかどうか、具体的に明らかにすることになった。
取材を通して、確かに現場の看護師が自分の日頃の医行為について躊躇したり、看護師としてこれでいいのかと悩んだりするという話を聞いている。このままでは、現場に混乱をもたらすという意味では、この検討は必要なことだっただろう。
また、看護師の役割拡大に、私は賛成する。さらに言えば、看護師を含めてメディカルスタッフは現場で専門性とスキルに基づいて経験を培うだけでなく、職能団体が実施する卒後教育で研鑽を積んでいる。教育に基づく、安全性の担保ができているのであれば、すべて「医師の具体的指示の下」でなくても業務を遂行できるように権限委譲してもいいのではないだろうか。