先月、バルト海に沈む難破船から19世紀のシャンパン(ヴーヴ・クリコ)が引き揚げられ、オークションにかけられたそうです。1世紀以上もの間、海の底に眠り、当時のシャンパンの味と香りを私たちに伝えてくれるボトル。なんともロマンのある話です。

 さて、そんなワインのボトルが実は機能美のかたまりであることをご存じでしょうか。ボトルの形には理由があります。私たちはボトルを眺めるだけで、中に入っているワインの味わいや特徴を推測することができるのです。今回は、味だけではないワインの世界をご紹介しましょう。

ブルゴーニュのシャブリ
(写真:MICHIGAMIワイン

 ワインのボトルというと、皆さんはどんな形を思い浮かべるでしょうか。基本的にボトルのタイプは大きく2種類に分かれます。主流は、なで肩で、底に向かって径が大きくなっていくフランスのブルゴーニュのようなタイプです。世界的にはこちらが多いようです。

 もう1つは、肩が張っていて、肩から底まで径が同じタイプ。シルエットは細めです。こちらはフランスのボルドーのワインが有名です。

 元々ワインは陶器や素焼きの壷に入れられていました。そのためワインは何年も保管できるものではなく、「寝かす」ということもほとんど行われませんでした。

 そこへ18世紀後半からガラス工業が発展し、ガラスの瓶の中で熟成させるというワインの新しい楽しみ方が発明されたのです。

 ただし、熟成させつつも、ワインはできるだけ早く飲むものでした。そのため当時のワインの瓶の底は平らになっています。現在でも、赤、白、ロゼを問わず、多くのワインの底面はほぼ平らです。

 その後、ワインを何年も寝かせて瓶の中で熟成させることが可能になると、ボトルの形が変わっていきます。何年も熟成させると、瓶内で発酵を終えた酵母が底に溜まります。注ぐ際に、この酵母の死骸がグラスに混入しないよう濾すために、瓶の底を大きくへこませるようになったのです。長期熟成型のボルドータイプのワインや、ナパの高級ワインが代表格です。