フィリップ・コトラーと言えば企業のマーケティング担当者にとっては神様のような存在と言われている。ノースウェスタン大学ケロッグスクール教授の彼は2010年にマーケティング理論の新しい概念「マーケティング3.0」を打ち出している。
インドネシアが主導するマーケティング3.0の世界
面白いのは、その著書『maketing 3.0:From Products to Customers to the Human Spirit 』が、インドネシア人の学者と共著であることではないだろうか。
インドネシアはまだ国民1人当たりのGDPが3000ドルをようやく上回った段階(2011年のデータで3508ドル)だ。
3000ドルというのは、それを超えるとモータリゼーションが本格化して高度成長が始まるという意味で、マジックナンバーと呼ばれている。
そんなまだ発展途上にある国の学者と世界的権威である米国のコトラーが新しい概念を表す。実はそこに世界の大きな変化を見て取れる。
つまり、成熟した米国だけからは新しい発想が生まれにくくなっている。
そして、インターネットという大変優れたマーケティングツールが整った段階で、いよいよマジックナンバーを迎えようとしているインドネシアにこそダイナミックな発想の転換が必要になっているということだ。
実際に、インドネシアの首都ジャカルタで会った共著者のヘルマワン・カタジャヤさんは次のように強調する。
「インドネシアの消費経済はこれから本番を迎えます。ここでは、これまで東南アジアの成長を引っ張ってきたシンガポールやマレーシア、あるいはタイなどとは少し違った現象が起きています」
「従来、つまりマーケティング1.0の製品中心の時代、2.0の顧客中心の時代とは明らかに違ってきているのです」