約3カ月にわたって行き詰まっていた米アマゾン・ドットコムと独立系出版社との交渉が決着したと複数の海外メディアが伝えている。
これにより中小の独立系出版社の電子書籍、約5000タイトルが再びアマゾンの電子書籍配信サービス「キンドル・ストア(Kindle Store)」で販売されることになった。
このことは、米国で電子書籍の販売をいち早く手がけたアマゾンが依然として市場支配力を持ち、その影響の強さが改めて浮き彫りになった出来事だと報じられている。
アマゾン、独立系出版社の電子書籍を撤去
問題は今年2月末に独立系出版社500社の書籍流通と販売を手がける米インデペンデント・パブリッシャーズ・グループ(IPG)がアマゾンと卸売り契約を更新する際の交渉で起こった。
業界誌のパブリッシャーズ・ランチによると、アマゾンが求めた新たな契約条項が出版社側の収益と作者に支払われる印税に大きな影響が及ぶことから、IPG側はより出版業界の慣習に近い条件を提案した。
しかしこれをアマゾンが受け入れず、同社はその直後にIPG加盟出版社の電子書籍をキンドル・ストアから撤去した。
両者は今回和解に至った経緯や、取引条件などは明らかにしていないが、米ウォールストリート・ジャーナルは、出版契約には通常、卸売価格、宣伝、支払い条件といった条項が含まれていると伝えており、これらの取り決めを巡って双方が譲歩したもようだ。
アマゾン4%の値下げを要求か
もっとも前述の業界誌は、アマゾンが4月に書籍のマーケティングに力を入れることを条件に4%の値引きと求めてきたと伝えており、大きく譲歩したのは出版社側と見られている。
このことから技術系ニュースサイトのザ・バージなどのメディアも、出版業界を取り巻く環境が厳しいものになっており、全米作家協会の会長をはじめ多くの業界関係者が懸念を示していると伝えている。
今年4月、アマゾンの値引き販売に不満を抱いていた出版大手5社と米アップルが共謀して電子書籍の価格をつり上げた疑いがあるとし、米司法省(DOJ)が提訴したが、これに伴って3社が司法省と和解している。