この点でも一昔前の日本における政治改革の議論は決して無駄ではないだろう。

日本は何をすべきか

 1955年体制下の日本では政官産の間で微妙なチェック・アンド・バランスが働いた。官僚の力を抑えられるのは政治家であり、官の指導下にある産業界は政治献金を通じて間接的に官の力を抑えた。

 このシステムそのものは破壊したが、いまだ新チェックシステムを導入できていないのが現在の民主党政権である。

 これに対し、中国では政官産がすべて共産党に支配されている。当然今のままでは健全なチェック・アンド・バランスは機能しない。

 一昔前は政治家の「鶴の一声」がチェック機能を果たす場合もあったが、習近平を中心とする次世代指導者はますます官僚化、弱体化しつつあり、あまり期待はできないだろう。

 1972年の国交正常化以来、日本政府は主として中国の政治家とのパイプ作りに腐心してきた。いざという時の毛沢東、周恩来、鄧小平らの「鶴の一声」に期待し、かつそれに依存してきたからだ。

 しかし、中国の政治家の影響力が低下した今、これまでのような政治家とのパイプ維持だけでは不十分である。

 どうやら日本政府も、中国国内でのチェック・アンド・バランス機能強化を念頭に置いた対中政策作りを考え始める時期に来ているようだ。

 当然中国側からは内政干渉と反発されるかもしれないが、チェック・アンド・バランス機能の欠如がいかに恐ろしいかを中国側政治家に直接伝えることも、立派な日中外交である。