党内派閥と薄熙来失脚
人間という種族が理性と自由意思で「群れる」以上、人間社会には必ず集団(ここでは「派閥」に統一)ができる。
原因は多種多様だが地縁、血縁、職場、同窓など、その基本的要素は古今東西変わらない。問題は、中国共産党において建前上「派閥」作りが明確に禁止されていることだ。
共産党内の「派閥」は少なくとも「非公式」であり、多くの場合「秘密」である。日本のように組織化されていないから、「会長」も、「事務局」も、「オフィス」もない。
「派閥」作り自体禁止だから、新しい「派閥」は簡単にはできない。多くは共産党結党以来、代々非公式ながら確実に受け継がれてきたものだ。
「派閥」の盛衰は予想以上に激しく、最終的にはその「派閥」のトップ・有力者の腕力次第だ。また、先ほど述べた地縁、血縁、職場、同窓などの要素は絶対的なものではなく、最後は個々人間の相性(ケミストリー)と「こいつとは政治的利益を共有できる」という強い相互信頼感がモノを言うはずである。
筆者は現在、共産党内部には少なくとも10~15ぐらいの非公式の「派閥」があるとにらんでいる。そうだとすれば、「黎明期共産党幹部の2世であること」以外共通点のない「太子党」自体、「派閥」ではあり得ない。
むしろ、それぞれの「派閥」に「太子党」と呼ばれる有力幹部2世政治家がいると考えるべきだ。
その点、「共青団(共産党青年団)派」は一種の「派閥」である。ただし、これはあくまで胡錦濤総書記と個人的信頼で連なる人々の集合体という意味だ。
彼らは現総書記と政治的利益を共有する集団ではあるが、現在の共青団という組織が独自のイデオロギーや政治的既得権益を代表しているわけではない。