先週末、北京の街を駆け足で回ってきた。今年は日中国交正常化40周年、ちなみに筆者の北京在勤当時は30周年だった。改めて中国が急速に変わりつつあることを実感する。
特に、過去10年の変化の中で印象的だったのは中国共産党統治形態の変質だ。今回は中国で感じた内政の大きな流れを検証したい。(文中敬称略)
共産党青年団と太子党?
予想通り北京の政治スズメの噂話は「薄熙来失脚」関連が圧倒的に多かった。一説には、薄熙来事件で太子党の影響力が低下し、これで共青団・李克強の次期国務院総理就任は確実になった。
いやいや、太子党はホープを生贄として差し出したのだから、李克強に代わって王岐山が次期総理になるべきだ。
いやいやいや、いずれにせよ李克強は国務院総理の器ではない、などなど。数え上げたら切りがないほどだが、筆者にはどれもピンとこないものばかり。
むしろ、今回北京にやって来て、現在の党内政治現象は、巷で言われるような「太子党vs共青団派」の暗闘とは全く異なる力学で動いていると確信した。
現在の中国共産党は共産主義でなく、少数の政治家による独裁でもなく、もちろん民主主義でもない。共産党は現在新しい統治形態に移行しつつあり、それは、誤解を恐れず申し上げれば、1955年以降日本の自民党安定政権時代に完成した「政官産」による政治利益共同体の「中国版」だと思っている。
筆者の仮説は、共産党内部の「派閥」がこれまで以上に顕在化する一方、政治、官僚、産業の間の力関係にも大きな変化が生じつつあるのではないか、ということだ。ここからは共産党統治の変化の本質を人的要素と組織的要素に分けてより詳しく検証してみたい。