2月18日、東京大学医学部付属病院で行われた天皇陛下の心臓パイパス手術が無事終了しました。

 東京大学の心臓外科チームに加えて、順天堂大の天野篤教授を加えて手術を行うという組織の枠を超えた「連携」。そして、宮内庁病院の侍医、循環器内科、心臓外科という各科専門医師の「協同」。さらには、病状をきちんと理解し、現代医療を合理的に受け入れた天皇陛下の「自律」的判断があってこその手術の成功でした。

 しかし、一連の報道の中で、この「連携」「協同」「自律」という医療再生に必要不可欠な概念を的確に報道したメディアは皆無に近かったようです。

組織のしがらみを超えてベストな連携がなされた

 2003年より始まった「新臨床研修医制度」以前は、医師は出身大学の大学病院で初期研修を受けていました。この場合、大学医局の結束は高まりますが、その一方で「他大出身者にはやり方を教えないし、全て自分の大学で治療する」という派閥主義がまかり通っていました。

 私は研修医時代に、ある有名な先生から「東大のスパイには手術を見学させない」と言い渡されたことがあります。

 また、開業してからも、近隣の医師から「自分の診療所に通院している患者さんは、(自分の出身である)○○大学に紹介することが決まっているので他の病院の紹介をするな」と申し入れられたこともあります。

 これらは、本来あってはならないことです。良い技術はお互いに見せ合って、より良くすべく相互が切磋琢磨すべきです。患者さんがどこで治療を受けるかは医師の出身大学ではなく、「どこでベストの治療を受けられるか」に基づいて決められるべきです。

 心臓バイパス手術自体は、国内で年間に1万5000件ほど行われています。もちろん東大病院スタッフだけでも施行可能な手術です。

 しかし、歴史的な手術において、東大のメンツやプライドではなく「何が一番ベストか」を考え抜いて、大学という組織の枠を超えた「連携」により執刀医師は決められました。組織のしがらみを超えてベストな連携がなされた手本と言っていいでしょう。