1. はじめに
日本は、戦後の驚異的な復興そして高度経済成長により、多くの人が食に困らず、自由で便利な生活をすることができるようになった。
しかしその一方では、少子高齢化を伴う人口減少、地方の過疎化、巨額の財政赤字、崩壊寸前の社会保障、超円高とデフレによる不況、さらには東日本大震災(特に福島第一原発事故)と危機的な状況が続き、政治はそれらの課題を何一つ解決できないでいる。
このような日本、成熟社会の負の現象(症状)が表れていると言わざるを得ず、今後生き残るには、強力な対策(治療)を必要とする。
2. 成熟社会とその特性
成熟社会とは、経済や社会制度が発展し、必要な物やサービスは満たされ、自由で便利な生活はできるが、成長がピークに達し色々な状況を呈している社会のことである。
人間は従来、集団(地域社会や家族等の共同体)が持つ伝統や知恵に学び、集団に支えられて生きてきた。
ところが成熟社会になると自己実現を目指して生き方が多様化し、物事の価値や判断を個人が行い、個人が責任を負う状況へと変化してきたのである。
つまり、食に追われ集団に支えながら生きた状況から、食は満たされるが集団との関係は薄れ個人の責任で生きていく、いわゆる「個人化」の傾向を示してきた。社会や国についても、それに応じて制度や仕組みが変わってきている。
3. 成熟社会の現象と矛盾
社会が成熟すれば、食や物や自由が得られ、満たされた平穏な生活ができるものと信じていた。ところが現実は、個人も社会も国も大きな問題と不安を抱えている状況である。
GDP(国内総生産)世界第3位(かつては第2位)の高いレベルにある日本であるが、GNH(国民総幸福量)は、なんと178カ国中第90位にとどまっている。
それを裏付けるかのように、自殺者は14年連続3万人を超え、簡単に人の命を奪う殺人事件や虐待事件が後を絶たない。
貧しくても助け合って生きてきた地方は高齢・過疎化で崩壊寸前、家族は、3世代同居の大家族から核家族、さらに進んで家庭を持たない一人暮らしの個族へと変化してきた。
豊かになったはずの社会や国は、冒頭に述べた色々な問題が表面化し、解決できずに苦しんでいる。形は様々であるが、成熟すれば得られると考えられた幸福な人生や豊かな社会とは矛盾する現象が起きている。