北米報知 2012年1月1日号

 昨年10月にワシントンDCで開かれた日米関係に関する会合で、クリントン国務長官は一つの懸念を示した。日本人留学生数の減少に関してだ。同長官は、留学生数の減少が将来の日米関係に暗い影を落とすことになると述べている。

 2011年の米国における日本人留学生総数は、2万1290人と前年比14・3%の下落を記録している。国別では7位と、1997年に4万7073人で国別1位を記録した頃に比べ、およそ半減している。

 海外留学に向かう日本人学生そのものも減少傾向だ。04年に8万2945人を記録して以来減少を続け、08年には6万6833人となった。いわゆる「若者の内向き志向」と嘆かれる原因はここにある。

 日本の調査会社「レジェンダ」によると、今年4月入社の新卒学生へ向けた勤務地に関する質問で、「海外で働きたい」、「海外で働いても良い」とする学生が前年比6・3%減の41・4%だったことがわかった。比較的高いように見えるが、このうちの約70%は留学経験者だった。留学経験のない学生は、国内で安定した暮らしを送りたいと考えている様子が窺える。

 現状を見て「外向き」と「内向き」の二極化が顕著になり始めているのではないか。今後、経済・政治のグローバル化は進み、日本も同じ道を歩む。

 内向き志向の若者は生き残れるのだろうか。シアトルに1年間留学中という、「外向き志向」の2人の学生に話を聞いた。

留学先で得る新たな刺激

 「自分にとって、実態の知れない新たな環境に身を置くこと自体が魅力的であり、心をくすぐるもの」――。そう語るのは、ワシントン大学に留学中の小林泰紘さんだ。

 日本の大学に在学中から、多くの国際交流の機会に恵まれ、日本から出ることに抵抗はなかったそうだ。数ある選択肢の中で、シアトルを選んだのは、英語習得という面ではない。

 「国際協力という観点からの非政府組織(NGO)、非営利団体(NPO)、さらにはソーシャルビジネスに対する興味から、その分野で全米でも有数のシアトルを選んだ」と語る。

 ベルビューカレッジに通う山碕峻太郎さんは、日本にいる頃から、カンボジアへの支援活動に全力を注いできた。「東京で多国籍のビジネスマン達が英語で討論しているのを見て、自分の小ささがわかりました。そこで、もっと自分の世界を広げようと決心しました」と語る。