北米報知 2014年7月3日28号

 ワシントン大学で日米に共通する現状やシステムの違いなどについて話し合う両国の元フォスターユース。 施設や里親家庭を巣立った日本の当事者(元フォースターユース)が児童福祉や自立支援制度のあり方について学ぼうと、シアトル市を初めて訪れた。

 6月25日には、米国のユースらとともにワシントン大学でのサミットに参加。両国の当事者が共通して直面する現状、システムの違いなどについて話し合った。「子どもたちの声が一番に尊重される社会であってほしい」―。ユースチーム結成から4か月。模索を続けながらも、新たな一歩を踏み出した。

ワシントン大学で日米に共通する現状やシステムの違いなどについて話し合う

 「誰に何を相談したらいいのか分からず、18年間、孤立していた」。マイクを握った星子良枝さん(20)は、抱えてきた思いを口にした。

 生まれてすぐに乳児院に入所。児童養護施設や里親家庭で育ったが、里親や施設員らとは信頼関係を築くことはできなかった。子どもに寄り添った環境が欠如していると感じた。

 日本には社会的保護を必要とする児童数は約4万6000人。約9割が乳児院や児童養護施設など、家庭的な環境とはかけ離れた場所で育っているという。特に0歳から3歳の乳幼児の施設集団ケアについては、国連から「国家による子どもへの暴力」と指摘されている。

 米国では、1986年に連邦政府が社会保障法を改正。フォスターユースを支援するための予算を確立し、現在では全50州に若者たちを支援するプログラムが整っている。

 米国でフォスターユースの活動を支えるティモシー・ベルさん(27)は「家庭的な環境で子どもたちが育つための継続した支援は、まだ米国でも欠如している」としながらも「21歳まで社会的養護を続けるなどプログラムが充実している州も複数存在する」と話す。

 日本においての社会的養護は通常、18歳で解除される。18歳から20歳までは未成年であるため、各種契約には保証人・親権者問題がつきまとうが、施設退所後は、施設長らを親権者にたてることはできない。

 大学入学まで児童養護施設で育った畑山麗衣さん(22)は、賃貸契約のみならず、携帯電話、クレジットカードの契約にも保証人、親権者が必要となり、その都度「絶望的な気持ちになった」と振り返り、「制度を変更してほしい」と訴えた。

 サミットでは、子どもの権利についても意見交換された。米国では「9歳の子どもにも弁護士がつく」と聞いた瀧澤政美さん(27)は「日本では司法が介入してくることはないし『子どもの権利』という考え方自体が定着していない」と吐露した。

 サミットは、日米のフォースターユースたちの交流と協働を支援するNPO団体「International Foster Care Alliance」(IFCA)の主催。

 同代表の粟津美穂さんは「ユースの交流が、よりよい支援や体制改善につながっていくと信じている」と話す。将来、数学教師になりたいという山之内歩さん(19)は「里子であるが故にいじめられ、それに苦しんだこともあった。でも、過去ではなく現在、未来が大事だと思える」と前を向く。

 日米の両国で育ったY.Sさん(23)は「米国では当事者本人たちが自分たちの権利向上のために声を上げて、活動をしている。声を上げることの大切さを日本で伝えていきたい」と力強く話した。日米双方のユースチームは、今後もサミットなどを通じて交流を続けていく。

(記事・写真=松島佳子)

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