ニッケイ新聞 2014年7月17~19日

 60年代にコリンチャンスなどでプレーした元プロサッカー選手で、現在は日本で評論家として活躍するセルジオ越後さん(68、二世)が、ブラジルW杯で敗退した日本代表について「敗因は日本の文化的背景にある」と語り、戦術や体調調整不良以外の点も含めた原因を指摘した。

敗因は文化的背景にあると語るセルジオ越後氏

 日本サッカーが世界で勝てない要因として、日本サッカー協会(JFA)を批判することを恐れるメディアの体質、それらを取り巻く世論など「社会全体が原因だ」と語った。

 「アジアと世界の差がなお開いてしまった」。15日に聖市内ホテルで取材に応じた越後さんは、そう残念がった。聖市内で生まれ、17歳でコリンチャンスのジュニオールに入団し、72年に訪日した初期はプレーし、引退後に指導者となり後進の育成に注力する傍ら、歯に衣着せぬ辛らつなコメントをすることで人気がある二世だ。

 今W杯にはアジア大陸から4チームが出場し、0勝9敗3分と無残な結果に。「だいたい文化や宗教など全てが違うのに、アジアというだけで一緒の地区にするのは無理」と現状を問題視し、「アラブ諸国の中東地区、日韓など東アジアなど生活環境も違う。国際大会はアジア大陸を東西に分けるべき」と変革を求める。

 「特に中東はオイルマネー(石油利潤)を得た一部権力者が楽しむためだけの競技となっている。良くなるのはハード(施設)の面だけ。これでは世界との差は埋まらない」とアジア大陸に潜む問題点を指摘した。

 「中東では娯楽」という認識とは別に、「日本サッカー界もプロスポーツのあるべき姿から遠ざかっている」と論じる。

 「(93年Jリーグ発足後)プロという看板を付けただけで、アマチュア時代から何も変わっていない。クラブチームの社長は親会社の人事で配置されただけ。会長は存在しない。選挙もない。責任問題もない。企業の関連事業として取り組んでいるだけ」とし、いわば企業の余技的な存在の日本のクラブと、世界の強豪を比較した。

 現にスペイン1部リーグのバルセロナは、ファンクラブ会員がそれぞれ選挙権を持ち、会長選が行なわれている。それだけ会員が重要な位置を占めている。

 近年にはイングランドなどでクラブ買収が騒動になっているが、「クラブ愛を持った者にしか権利はない」とサポーターが売却を認めない考えを示すなど、プロのクラブらしい反応が話題になった。

 「日本ではプロスポーツと言っているのに『倒産』がない。『解散』という言葉を使うでしょう? いかにプロとして認識されていないかが分かる最たる証拠。親会社の持ち物であって関連会社と同じ位置づけでしかない。これが日本の全スポーツ文化の背景だ」と問題視した。

 同氏に言わせれば「野球もプロではない」。