台湾総統選、有権者は対中問題に無関心 馬総統に逆風か

支持者に手を振る民主進歩党(民進党)の蔡英文・総統選候補〔AFPBB News〕

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●「中国株式会社」の前身は孫文が1912年に設立した「中国統一商会」である。

●孫文のビジネスモデルは「駆除韃虜、恢復中華、建立民国、平均地権」だが、その本質は異民族支配を廃し、党軍一体国富独占による共和国樹立によって漢民族中心の中国統一を実現することだった。

●国民党が革命直後の混乱と内戦の敗北により台湾に逃れたため、「中国統一商会=中国株式会社」のビジネスモデルは一党独裁体質という点で国民党と大差ない共産党が引き継ぐことになった。

●北京の「中国株式会社」本社にとっては、国民党残党が台湾で興した会社も同社の「台湾支店」に過ぎない。「中国の統一」なるビジネスモデルにはいかなる例外もあり得ないからだ。

●一方、「台湾支店」側も、自分たちこそが「中国の統一」なるビジネスモデルを受け継ぐ真の「中国株式会社」だと考えていた。孫文のビジネスモデル維持こそが彼ら経営陣の正統性の源泉だからだ。

●毛沢東の時代、北京「本社」はこの「台湾支店」の倒産か、敵対的買収を目指していた。鄧小平の時代になると「台湾支店」との、敵対的ではなく、平和的な合併が模索されるようになった。ただし、「台湾支店」が「中国株式会社」の一部であるという基本認識は一切変わっていない。

●その頃、「台湾支店」の従業員の約6割が台湾人、約3割は客家人、国民党の流れを汲む外省人は1割強に過ぎなかったはずだ。されば、外省人中心の一党独裁型ビジネスモデルが、台湾に根を張り独自の発展を始めた「台湾支店」の実態にそぐわなくなるのも極めて自然な流れだろう。

●こうした傾向は冷戦後の「民主化」によりますます顕著となった。さらに拍車をかけたのが江沢民の時代の「台湾支店」に対する物理的圧力だ。これによって「台湾支店」の「台湾化」が一層進み、「中国の統一」などに関心のない台湾の従業員の一部で新たに「台湾株式会社」の設立を望む声が高まった。

●北京の「本店」は建前上「台湾株式会社」を力をもってしても潰さざるを得ない。さもなければ現在の経営陣は「中国株式会社」の株主たちの信任を失うからだ。他方、今の「本店」にこうした荒療治を単独で実行する能力はない。「本店」の選択肢は極めて限られている、というのが実態だろう。

●「台湾支店」にとっても、「台湾株式会社」の設立は許しがたい行為だ。他方、旧態依然の古いビジネスモデルに固執するだけでは、結果的に「本店」の影響力が拡大するだけであり、地元の従業員の不信感を払拭することなど到底できない。どうやら「台湾支店」の選択肢にも限界があるようだ。

●最後に、台湾人、客家人など地元の従業員にとっても、「台湾株式会社」設立のタイミングは既に失われている。21世紀に入り経済的に「本社」が圧倒的に有利となり、「本社」と取引しない限り、「台湾株式会社」はもちろんのこと、「台湾支社」すらビジネスとして立ち行かなくなるからだ。