「公務員を辞めて最も良かったことは?」と問われれば、躊躇なく「好きな時に好きな所へ行く自由」と答えている。その究極の自由を満喫すべく、今週末は台湾に行くことに決めた。「中華民国」と呼ばれる中国語圏で1月14日に行われる「総統」と「立法委員」選挙の実態をこの目で確かめてみたいからだ。
思い立ってから数日で旅行準備はあっけなく完了した。役人時代には想像もつかないスピードと簡便さだ。
27年間の外務公務員時代に台北へ出張したのは1996年の1回だけ。台湾が今も日本政府関係者にとって「近くて遠い」存在であることを痛感する。
今週末の選挙結果次第では中台関係が再び不安定化することにもなりかねない。しかも、前回筆者が台湾について書いた(「民主化の道は絶対に選べない中国~台湾と中国の大きな違い」)のは、2年近くも前の話である。
というわけで、今回と次回は台湾、特にその政治指導者の選挙をテーマとして取り上げることにしたい。(文中敬称略)
本店か支店か
台湾関連で最も興味深いのは大陸と台湾の対立、いわゆる「両岸関係」だろう。この複雑な国際(国内)情勢を詳しく論じ始めれば優に数冊本が書ける。
中台関係は「一国二制度」「特殊な国と国」「一辺一国」「三不排」など様々な概念の歴史でもある。微妙な表現の違いに深い意味を込める場合も多い。
だが、こうした専門の世界に入り込むと頭が痛くなるのは筆者も同じだ。ここは議論を単純化して、台湾問題の本質をじっくりと考えたい。
このコラムでは一貫して、「中華人民共和国は、国家ではなく、企業体として捉えた方が理解しやすい」と主張している。されば、「中華民国」も同様と思い、次の仮説を考えてみた。