以前このコラムで、中華人民共和国の将来の究極モデルは「シンガポール」か「台湾」ではないかと書いた。中国が何かの拍子に民主化すれば台湾型が、逆に民主化を拒否し続ければシンガポール型が、それぞれ参考になるということだろう。
こう考えたら、次の疑問がわいてきた。同じく成熟した比較的小規模の中華系政権にもかかわらず、なぜ李登輝は民主化を選び、リー・クアンユーは民主制を採用しなかったのだろう。
この問いに対する答えを見つける機会は意外に早くやってきた。今週久しぶりに台湾へのセンチメンタルジャーニーが実現したからだ。今回は最新の台北事情をご紹介しながら、このちょっと気になる疑問を解明してみたい。(文中敬称略)
定着した民主主義
台湾と中国の交流機関のトップ会談が開催されるのに反対してデモを繰り広げる台湾の人たち(2009年12月)〔AFPBB News〕
今回の原稿、実は台北からの帰りの飛行機の中で執筆している。1996年に世界貿易機関(WTO)関連公務で出張して以来の台湾訪問だ。
1976~77年に台湾師範大学で短期間ながら中国語会話を学んだ筆者にとって、今回は実に三十数年ぶりで懐かしい台北の街並みを「一私人」として勝手に歩き回る機会となった。
国民党による一党独裁制の下で政治情報が厳しく制限されていた当時とは異なり、台北の街は自由に満ち溢れていた。人々は誰に憚ることなく政権党を批判する。
政治スズメたちは年末の台北など5大市長選挙の予想談義に明け暮れ、世論調査の結果に一喜一憂する。
「何を今さら」と台湾の方々には叱られそうだが、筆者もイラクの「民主化」がいかに緩慢で不安定であるかを実際に見てきている。民主化とは口で言うほど容易なプロセスではないのだ。
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