欧州中央銀行(ECB)は2010年4月8日、資金供給における適格担保基準の緩和措置を当面続けることを決めた。その肝は、ギリシャ国債を適格担保にとどめ、同国の資金繰りを支えるためだ。
財政危機の加盟国を守らないとユーロは分裂する恐れがある。ある意味、ECBは加盟国がユーロ圏にとどまる接着剤役なのだが、担保基準の緩和でギリシャを支援するツケは重い。ECB自身の信認が低下する恐れがあるからだ。
ユーロ問題については、既に2010年3月17日付「日英危機報道は、悲劇を煽る新聞の悪癖?」で若干触れた。また、当サイトではフィナンシャル・タイムズ(FT)紙の論評も多く紹介されているため、ここではもっぱら中央銀行のオペレーションの観点からギリシャ危機がユーロにもたらすリスクを考察してみたい。
日米は異例措置の解除に動き始めたが・・・
まず、適格担保の緩和措置を継続した理由である。中央銀行は資金を供給する時、原則として相手先の金融機関から供給規模に見合った担保を取る。資金が焦げ付いて中銀資産の健全性が損なわれるのを防ぐためだ。資金供給の「有担保原則」と称され、日銀もこの原則を重視している。
平時は、中央銀行が受け入れる担保は国債や優良企業の社債、コマーシャルペーパー(CP)など最上級の金融商品に限定されている。短期金融市場の流動性が逼迫した時に限って、必要に応じて担保基準を緩める。担保となる金融商品が増えれば、資金の供給量も増やせるからだ。2008年のリーマン・ショックに伴う金融危機では、日米欧の中央銀行は一斉に担保の緩和策を講じた。
金融危機が一服し短期市場の流動性懸念が後退した現在は、基準を元に戻す局面にある。
実際、米連邦準備制度理事会(FRB)や日銀などは異例措置の解除に着手している。そうした中、ECBが担保基準の正常化を断念せざるを得なかったのは、本来は最上級であるはずの国債が一部の加盟国で劣化し始めたからだ。ギリシャである。